乳幼児期の出来事をすぐに忘れてしまう「幼児期健忘」は誰にでも起こる現象です。アイルランドの研究チームが、これまで謎とされてきたそのメカニズムの一部を明らかにしたとして、科学誌
PLOS Biologyに論文を発表しました。
研究チームは幼いマウスを使って、恐ろしい体験をどれだけよく覚えているかを調べる実験を行いました。そして、脳内の免疫細胞である「ミクログリア」の活性を阻害すると、マウスの記憶が保持されやすくなることを突き止めました。
また、ミクログリアの活性を阻害すると、特定の記憶情報を保持する神経細胞「エングラム細胞」が活性化することも確認されました。
過去の研究では、免疫系が活性化した状態の母マウスから生まれた子マウスは、幼児期健忘が起きないことが分かっています。しかし、そうした子マウスのミクログリア活性を出生直後に調節すると、幼児期健忘を持つ状態に戻ることも明らかになりました。
研究チームは、ミクログリアが記憶形成の管理や、何をいつ忘れるかの決定に積極的に関与している可能性があるとみています。
なお、幼児期健忘は、長期にわたり親の保護が必要な「晩成性哺乳類」にのみ見られる特徴だといいます。幼児期健忘に適応戦略の意味があるかどうかは、残された大きな疑問の一つです。