カナダのマクマスター大学と米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、炎症性腸疾患(IBD)に特化した新しい抗菌薬候補を発見し、生成AI技術を活用してその作用機序を解明したと、科学誌
Nature Microbiologyに論文を発表しました。
既存の抗菌薬の多くは広範囲の細菌に効果があるよう設計されており、有益な腸内細菌(善玉菌)も一掃してしまいます。そのため、薬剤耐性菌の増殖や腸内環境の悪化を招き、「クローン病」などのIBDの症状を悪化させることが問題となっています。
研究チームが発見したのは、IBD患者の腸内で増殖しやすい腸内細菌科(Enterobacteriaceae)のみを標的とする「enterololin(エンテロロリン)」です。エンテロロリンは狭域抗菌薬で、薬剤耐性菌にも効果を発揮し、腸内環境を大きく乱すことなく細菌の増殖を抑制できるといいます。
さらに研究チームは、MITが開発した生成AI技術「DiffDock」を活用し、エンテロロリンの作用機序を解明しました。DiffDockは、わずか100秒で新薬が標的とするタンパク質を予測。実験により、この予測が正確であることが確認されました。
DiffDockの導入によって、通常は2年・200万ドル(約3億円)かかる作用機序解明のプロセスが、半年・6万ドル(約900万円)で完了したとのことです。
研究チームは、「これまで創薬におけるAIの活用は、候補分子の探索中心だったが、今回は作用機序の解明に活用した点が重要だ」と強調しています。また、今後3年以内にエンテロロリンの臨床試験を開始する予定であることも明らかにしました。