2026.03.30
臨床検査の専門医は日本に600人ちょっと。いったいどのような診療科なのか、なぜレアな診療科を選んだのか、専攻医アンナが初期研修医ズッキからの質問に答えます。
臨床検査の専攻医アンナ(ハンドルネーム)と初期研修医ズッキ(同)の対談をお届けする。
アンナ医師はよく笑い、一見あっけらかんとした印象の女性だ。しかし、対談での受け答えの様子から、いろいろな葛藤を乗り越えてきた芯の強さと、真面目さがうかがえた。ズッキ医師は素直さと優しさがにじみ出る好青年。進路は別の診療科に決まっているが、実態がつかめていない臨床検査について知りたいということでインタビュアーを引き受けてくれた。
基本領域19診療科の中でも専門医の数が最も少ない臨床検査とは、いったいどのような診療科なのか。なぜアンナ医師はそのレアな診療科を専門に選んだのか。ズッキ医師が少しずつベールをはがしていった。
専攻医アンナ
検査科(臨床検査)の専門医は、日本に600人ちょっとしかいないので、かなりレアな存在だと思います。初期研修医が検査科についてどんな印象を持っているのか知りたいのですが、ズッキ先生はどうですか?
初期研修医ズッキ
アンナ先生の前でこんなこと言うのも失礼なんですが、実態がつかめないというのが正直な印象です。僕が勤めている病院には臨床検査の医師が1人いますが、サンプルがそれだけですしね。
専攻医アンナ
その“サンプル1”の印象はどうですか?(笑)。
初期研修医ズッキ
他と違っているというか。変な意味じゃなくて、ですよ(笑)。外科系のようにガツガツした感じはなく、かといって多くの内科系の医師とも雰囲気が違うんですよね。
専攻医アンナ
そうですよね。検査科って「よく分からない」ですよね。まあ、私もそうでしたから。学生の頃は確かに検査科の先生の基礎医学的な授業は受けていたのですが、病棟実習でも回らなかったし、初期研修のローテ(ローテーション)にもありませんでした。
初期研修医ズッキ
僕の病院も初期研修のローテにはないので、業務で関わるということがないんですよ。
専攻医アンナ
病院によっては、臨床科の先生が検査科に「この検査について質問したいんですけど」とコンサルトするルートもあるので、そういうところは初期研修医でも関わることがあるかもしれませんけどね。
初期研修医ズッキ
アンナ先生は、なぜ臨床検査を専門に選んだのですか? 初期研修のローテ(ローテーション)にもなかったという話ですが。
専攻医アンナ
実は初期研修が終わった後に、検査科(臨床検査)ではない診療科の専門研修に進んだんです。大学の医局に入局して。それで、専攻医3年目で子どもができたんですね。でも、当時は子どもがいる状態で大学病院に勤務するというのがかなり難しくて、大学病院を辞めたんです。
初期研修医ズッキ
ああ、そういう経緯があったんですか。
専攻医アンナ
私は担当の患者さんが入院したら、ずっと病院にいたいタイプなんです。一方で、子どもも本気で育てたくて。このままだと精神的に崩壊しちゃうと思ったんですよ。
初期研修医ズッキ
なるほど。それで、大学病院を辞めてからは、どうしたんですか?
専攻医アンナ
「バイト医(非常勤医)」としてクリニックで働き始めました。ただ、クリニックでできる診療には限界があって、そこで診られない患者は大学病院に送るわけです。その時、私はまだ30代半ばでしたから、大学病院にいたら「中堅」になったばかりですよね。まだまだ勉強したり教わったりすることがたくさんあるんだよな……と思ったら、そのままでは医者として成長が頭打ちになっちゃう気がして、モヤモヤしながら日々を過ごしていました。
初期研修医ズッキ
分かる気がします。クリニックはそれが役割ですけど、成長を考えると。
専攻医アンナ
私は大学院に入って研究をやりたいとも思っていたんです。ただ、臨床から完全に離れるのは嫌で、さらに子育てもしたいし。それで、そんな仕事がないかを、子どもが寝た後でひらすらインターネットで探したんです。
初期研修医ズッキ
そして見つけたわけですね。臨床検査を。
専攻医アンナ
そうなんです。でも、調べてみると病院によってやっていることが全然違うんです。生理検査の超音波に力を入れていますとか、脳波をやっていますとかね。中でも検体検査の骨髄像の判読を頑張っていますというのが一番多くて。私は血液内科が好きだったので、「骨髄いいかも!」と思って、通勤できる場所にある病院のリストから今の病院を探して、面接というか話を聞きに行ったんです。
初期研修医ズッキ
話を聞いてみて、アンナ先生の希望にピッタリ合っていましたか?
専攻医アンナ
業務の内容や専攻医へのサポートがすごく良くて、さらに0歳児の子育てをしている私を受け入れてくれるという懐の深さのある病院で。「ここだ!」と思って、専攻医登録をしてもらいました。
初期研修医ズッキ
臨床検査の業務は、具体的にはどんなことをやるんですか?
専攻医アンナ
大きく二つに分けられるんです。一つは臨床科の先生のための業務です。検査についての判読レポートを付けたり、「これを調べたいけど検査はどうすればいい?」と聞かれたときにそれに答えるコンサルテーションをしたり。もう一つは、検査室の運営と精度管理です。精度管理というのは、検査の品質の担保です。ズッキ先生はカルテに書いてある検査結果のデータを疑ったことってありますか?
初期研修医ズッキ
いや。ないですね。
専攻医アンナ
そうですよね。それは、臨床検査技師が検体を正しく管理して、正しく測定して、正しくカルテ端末に返しているからなんです。でも、ヒューマンエラーは起こり得るし、機械に異常があって間違った数値が出てしまうことがある。だから、そういうことが起こらないように、技師さんと一緒に機械や薬剤の管理をして、検査が正しく行われているかどうかを毎日チェックしているんですね。
初期研修医ズッキ
それがあって、臨床科の医師はデータを信頼して診療ができるんですね。何かトラブルは割と頻繁に起こるのですか?
専攻医アンナ
いや。頻繁には起こりません。何かトラブルがあった場合は、なぜそれが起きたのか、今後はどうすればいいのかを技師さんと考えて答えを出します。それを臨床科の医師に説明するのも検査医の役割なんです。
専攻医アンナ
ズッキ先生は「検体検査管理加算」って聞いたことがありますか? 患者さんのレセプト(診療報酬明細書)にも載っていることがありますが。
初期研修医ズッキ
いや。聞いたことはないです。
専攻医アンナ
常勤の臨床検査医を1人置くことによって「検体検査管理加算Ⅳ(4)」が取れるんです。つまり入院患者1人当たり診療報酬で500点が取れて、5000円もらえるわけです。※注:2026年度診療報酬改定で、加算(Ⅳ)は500点から550点に増点される予定
初期研修医ズッキ
大学病院だったら、1年間にしたらかなりの額になりますね。
専攻医アンナ
そうなんです。それは、検査が正しく行われているという責任を検査医が担保しているから、もらえるものなんです。
初期研修医ズッキ
初めて知りました。勉強になります。そうなると、検査医は大きな規模の病院にしかいらないですね。
専攻医アンナ
クリニックには必要ないですよね。そもそも臨床検査技師がいませんし、検査の機械もありませんから。だから、検査医が働ける場所は、それなりの規模の病院に限られるんです。
初期研修医ズッキ
臨床検査の「姿」がなんとなく見えてきました(笑)。
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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