2025.08.19
リハビリテーション科専攻医タツ(ハンドルネーム)と初期研修医シュン(同)の対談をお届けする。
タツ医師は、初期研修後に大学病院で1年勤務し、市中病院に移って日々研さんを積む2年目の専攻医だ。物事を冷静に見ている、落ち着きがある、それでいて突き放した感じがしない――という印象の人物である。初期研修2年目のシュン医師は進路を本格的に検討する時期に差しかかっており、自身の運動経験から、リハビリテーション科や整形外科に興味を持っているという。
リハビリテーション科は、2001年に日本専門医機構が定める基本領域として18番目に加わった比較的新しい診療科だ(その後に「総合診療」が加わり、基本領域は現在19診療科)。専攻医はどんなふうに働き、どんな壁にぶつかり、何に喜びを感じるのだろうか。
初期研修医シュン
リハビリ科に進んで感じた難しさはありますか?
専攻医タツ
大学病院にいた時は「主治医」ではない分、仕事の手応えがない時期がありました。
初期研修医シュン
どういうことでしょうか。
専攻医タツ
勤務先では、リハビリ科は病棟を持っていませんでした。そのため、主の診療科の医師が治療しているのを「横から見ているだけ」のような印象が強かったんです。急性期病院なので、ほとんどの患者が、内科的な治療が終われば退院します。一応、評価(身体機能、心理的な状態、日常生活でどの程度活動できるかなどを見定めること)をするけど、これは何の意味があるんだ……という虚無感がありました。
初期研修医シュン
けっこう気持ちが落ちていたんですね。主治医でないと、どんなふうに患者を診るんですか?
専攻医タツ
初診の時に併せて患者の評価をして、あとはセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)に引き継ぐ感じです。
初期研修医シュン
なるほどなるほど。
専攻医タツ
それから2~3週間後に患者の状態を診に行くんですが……。その間、主治医だったら、採血のデータを見て対応するなど、日常的にできることがあるんでしょうけど、それもありません。何を診てどういうふうにしたら患者が困っていることが解決できるんだろうと悩みました。結局リハビリを施すのはセラピストだしな……と無力に感じていた時期はつらかったです。ただ、今となっては、それは経験でカバーできることが分かります。
初期研修医シュン
いろいろと悩んでいたんですね。
初期研修医シュン
大学病院に勤務していた時はどのような一日を過ごしていましたか。
専攻医タツ
内科や外科から入院患者のリハビリのオーダーが入るので、指導医の先生と一緒に診ていく感じです。午前中は病室を回って、身体所見を取って、リハビリの処方をしていきます。
初期研修医シュン
午後はどんな感じですか。
専攻医タツ
午後は固定のイベントがあります。例えば、嚥下(えんげ)造影検査や嚥下内視鏡検査(VE)、患者に適した装具を決めて処方する装具診。それから、脳卒中の後遺症として多く、手足が動かしにくくなる症状の「痙縮(けいしゅく)」に対するボトックス治療なんかを外来で行います。
初期研修医シュン
外勤はあるんですか?
専攻医タツ
はい。医局が手配する半日の外勤を週に2回していました。簡単なリハビリの処方、嚥下造影検査、訪問リハビリの診察業務などを行います。大学病院での仕事について補足すると、主治医としての業務がない分、比較的時間があるので、学会発表の準備をしたり、論文を書いたりする時間も、まあまああります。
初期研修医シュン
具体的にイメージできました! ありがとうございます。
初期研修医シュン
専攻医2年目の今はどんな感じで働いているのでしょう。
専攻医タツ
リハビリ科の単科病院で主治医をしていて、常に15人ほど患者を抱えています。患者は、急性期病院を退院した後に入院してくるので、内科的には安定しています。自宅に帰れる状態だけど、体の動きの面で日常生活を送れるレベルにない患者に対して、リハビリを行います。
初期研修医シュン
セラピストとの仕事のすみ分けはどんな感じですか。
専攻医タツ
リハビリを実際に施すのはセラピストで、機能障害に対してどのようなアプローチを取るか決めるのが主治医です。ただ薬を出したり、体調の管理をしたりするだけではありません。定期的にカンファレンスをして、リハビリの進行度合いを把握し、それに応じた方針をセラピストに伝えます。
初期研修医シュン
医学的な視点で診られるのは医師だけということですね。
専攻医タツ
そうですね。僕たちリハビリ科医は、病態から機能障害を診断して、全体的に見て、アプローチの仕方を指導します。
初期研修医シュン
仕事をする上で意識していることはありますか。
専攻医タツ
患者の機能障害を、一回の診察で読み取ることが重要だと大学病院で学びました。大学病院ではつらい時期もありましたが、その経験を生かしてうまくできたとき、大きな喜びを感じます。
初期研修医シュン
つらい時期も無駄ではなかったということですね。
初期研修医シュン
これまでの話を踏まえると、今後はリハビリの専門病院でずっと働こうと思っているんですか?
専攻医タツ
それが、振り返ってみると、大学病院にもすごく良い面があると思うんです。一緒に働くセラピストに関していうと、機能障害に対する探究心が強く、論文を出したり、大学院に行ったりしている人もいます。
初期研修医シュン
それはすごいですね。
専攻医タツ
医師も、研究熱心な人がたくさんいました。一方で市中病院は、とにかく仕事を“回す”ことが重視されるんです。
初期研修医シュン
回すというと、どんなイメージですか。
専攻医タツ
動けない原因を追究するというより、とにかく家に帰すことを目的にしたADL(日常生活動作)のリハビリがメインになります。回すことに熱量を高く持てない時もあるので、現場でたくさんの患者を診るより、研究に重点を置いて大学病院で学び直したいと思うことがあります。
初期研修医シュン
大学病院は研究の環境が整っていますもんね。
専攻医タツ
大学病院なら、筋電図の検査をはじめとして検査の種類も多く、ロボットを使ったリハビリもできます。本当に有効な機能障害の診断をして、それに対するアプロ―チを突き詰めることができるのがメリットですね。
つづく 8/25公開予定!
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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