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2026.09.30

Olá(オラ)! ポルトガルで欧州ヘルニア学会に参加しました【蜂谷裕之(6)】

文:蜂谷裕之/イラスト:平野キウイ(平野カズ希)

毎年、欧州ヘルニア学会(EHS:European Hernia Society)の学術集会に参加することを楽しみにしています。今年はポルトガルのポルトで6月3~5日に開催されました。EHSには毎年、世界中から外科医が集まり、新しい手術・治療方法や医療機器についての発表や議論が行われ、新しい知識を得ることができます。

さらに、海外の学会の醍醐味(だいごみ)はそれだけではありません。日本の医療について考えたり、コミュニケーションの価値を再認識したりする貴重な機会でもあります。今回は、学会参加とポルトガルへの旅で感じたことについてお伝えします。

世界で学び、日本の医療水準をさらに高める

今年は私も、日々行っている手術について発表してきました。EHSでの発表に当たっては、まず演題を提出し、英語で抄録を書き、それからスライドを作成します。世界中の外科医の前で発表を行うことは、もちろん私にとって重要な経験になります。でも、それだけでなく、各国から集まった外科医の発表を聞き、意見を交わし、日々の手術を見つめ直すこと。そして、新しく得た知識やアイデアを日本に持ち帰り、診療に生かすこと。それが海外の学会に参加する大きな意味だと思っています。

実際、昨年フランス・パリで開催されたEHSでは、鼠経(そけい)ヘルニアの治療法に関するアイデアを得ました。それを基に新たな手法を試してみたところ、結果的に世界初の術式として論文で報告することができたのです。世界に出て学ぶことが、新しい医療を生み出すきっかけになるのだと身をもって実感しました。

ポルトガルの伝統的なお菓子を食べながら情報交換

会場内にはケータリングコーナーも用意されており、休憩時間にはリラックスした雰囲気の中で、参加者と交流ができました。コーヒーを片手に、初めて食べるポルトガルの伝統的なお菓子「エッグタルト」などを楽しみました。
この時、スペインの外科医と話し、スペインにおける鼠径ヘルニアの手術事情を知ることができました。日本ではロボット支援手術の導入・普及が進んでいますが、スペインではコストの関係で積極的には行われていないそうです。

また、会場内の企業展示では、各メーカーが最新の医療機器や手術器具を紹介しています。特に興味を持ったのが、鼠径ヘルニアの手術で患部を修復するために用いる網状のシート「メッシュ」に関する新しい技術です。メッシュの素材に、特殊な光に反応する色素が含まれており、光を当てることで組織に接着させるというものでした。世界の新しい医療技術に直接触れられることも、海外学会ならではの魅力だと感じました。

笑顔と相手に合わせた言語の大切さを実感

それから飛行機移動を通じて、日本の空港や航空会社の案内の分かりやすさとスタッフの丁寧な対応は、世界でもトップクラスだと実感しました。中でも、客室乗務員の笑顔が強く印象に残っています。素敵な笑顔を見ると安心してこちらまで自然と笑顔になりますし、とても温かい気持ちになります。

そんなことを考えていたら、不安を抱えて病院へ訪れる患者さんたちの顔が思い浮かびました。医療の知識や技術だけでなく、「ここなら安心できる」と感じてもらえるような対応、そして笑顔を大切にしようと胸に刻みました。

また、現地でのあいさつは「Hello」ではなくて「Olá(オラ)」、ありがとうは「Obrigado(オブリガード)」と、蜂谷病院でブラジル人の患者さんに接するのと同じように、ポルトガル語を使いました。すると皆さん笑顔で応じてくれ、一気に距離が縮まったように感じました。相手に合わせた言語を使うこともまた、コミュニケーションの秘訣だということを改めて思いました。

それから余談ですが、この旅では、ポルトのホテルの部屋から私がパーソナリティーを務めている地元・群馬県のラジオ番組にも電話で出演しました。人生で初めての海外からのラジオ出演……! これもまた、良い経験となりました。

それでは次回をお楽しみに! Tenha um bom dia!(※)
※読み方は「テニャ・ウン・ボン・ジア!」。ポルトガル語で「よい一日を!」という意味です
蜂谷裕之プロフィール画像
 

蜂谷裕之 (はちや・ひろゆき)

 

消化器外科医、博士(医学)。1983年、群馬県生まれ。2008年、川崎医科大学卒業。栃木県の獨協医科大学病院(下部消化管外科講師)と群馬県の蜂谷病院で勤務している。専門は大腸肛門病、鼠径(そけい)ヘルニア、下肢静脈瘤(りゅう)。1959年開院の蜂谷病院は、人口の約21%が外国人である大泉町唯一の病院として医療を提供している。地元の二つのラジオ番組でパーソナリティーを務め、医学と健康の話題を届けている。2025年の目標は国際学会で活躍すること。最近、親子でバイオリン教室に通い始め、新たな趣味になった。

蜂谷医師のX、蜂谷病院のInstagram

平野キウイプロフィール画像
イラスト

平野 キウイ(ひらの・きうい)

「愛おしいものを、形に残す。」を軸に、物語のある建築・暮らし・人を描くイラストレーター。

アイソメトリックを用いた緻密な空間表現と温かみのあるタッチが特徴。

建築画から絵本まで幅広く制作し、手仕事ブランド「KiUito」やアート作品にも取り組む。西宮を拠点に活動中。

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