2025.09.25
心療内科医・鈴木先生との対談。初期研修は“完走”から“生存”へ。私も鈴木先生も生きるために逃げ、転職や環境変更を経験。逃げた後は努力も休養も自由。生存で100点、退路を常に考えよう。
第1回のコラム 『緩い気持ちで細く、長く』 で「元気に生きているだけで100点! 初期研修を修了するだけで200点! 専門医まで取れたら300点!」と申し上げましたが、訂正します。「元気に生きているだけで100点!」それだけです。
今回、この番外編で対談した心療内科医の鈴木裕介先生は、実は私と同じ高知大学医学部ダンス部の先輩で、一緒に踊ったこともあります。
鈴木先生は大学卒業後も「コーチレジ」という高知県の初期研修医を支援する活動に従事され、高知県で初期研修をしていた私もお世話になりました。「元気で100点。初期研修修了で200点」という言葉は、鈴木先生がコーチレジで「研修医のメンタルヘルス」について講演された内容の影響を受けています。
当時の講演は「メンタルヘルスの知識を身に付けて初期研修を何とか完走しよう」というニュアンスがありました。なので、私も「初期研修修了で200点」としていたわけですが、対談企画の予習として鈴木先生の最近の著書やビデオ講演を見ていると、初期研修の目的は「完走」から「生存」へとアップデートされていました。私も同意なので、アップデートします。生存で100点! 以上!
私も鈴木先生も「逃げる」という選択肢を取った、という共通点があります。鈴木先生は勤務医から、私は基幹病院勤務から、自分が生きるために逃げています。
私は基幹病院勤務中に、「このままここで働き続けていたら、自分が死ぬか患者が死ぬかする」と感じるほどに追い詰められたため、マイナビDOCTORのような医師転職サイトを用いて転職活動をしていました(マイナビさん、すみません。この時に利用していたのはマイナビではありません)。
結局、転職サイトではなく、当時の上司の紹介で今の職場で勤務することになったわけですが、この時に転職活動をしたのは私にとってプラスに働いています。今の職場で何かあっても、いざとなればまた転職活動すればいいしな、というメンタルでいられるのはすごく楽です。鈴木先生の著書『研修医メンタルヘルス解体心書』(鈴木裕介・清水真祐子著、中外医学社)で「『休職』『退職』『転職』の3つは早めに経験した方がよい」と書いてあるのを読んで、激しく首肯しました。
「逃げる」を選択すると、どんどん怠惰な方向に進んでいくのではないかと心配する方もいるかもしれません。でも、そんな心配はいりません。逃げた先で休んだ後は、新たな環境で新たな努力をすればよいのです。
鈴木先生も勤務医から逃げた後は、コンサルタントや心療内科開業医として努力をされたことでしょうし、私も基幹病院勤務から逃げた後は、専攻医を支援する活動などで努力をしています。もちろん、逃げた後、ゆるゆるとした生活を続けるのもよいと思います。なにせ生存だけで100点ですから。
さあ、皆さんも逃げましょう!……とまでは申し上げませんが、生きるために逃げるという“戦略的撤退”をいつでも選択できるように、皆さんもぜひ、平時から退路について考えておいて下さい。
川久保弥知(かわくぼ・みとも)
1987年、高知県生まれ。初期研修までは高知で「育つ」も、麻酔と集中治療の両方を学びたいと思い立ち、後期研修(専門研修)から広島市民病院で研さんを積む。現在は呉共済病院に勤務。Twitter(現X)で麻酔科についていろいろな投稿をしていたところ、日本麻酔科学会の偉い人に拾われ、学会公式アカウント開設に携わる。
最近の趣味は、子どもと一緒に始めた「ポケモンカードゲーム」。どうせやるなら本気で、と親子で大会にも参加している。
イラスト
月曜のマミンカ
神奈川県川崎市在住のイラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナー。
2022年、絵本「カモンダメダメモンスター」を出版後、こどもと楽しめるワークショップを不定期で開催。
4匹の保護猫とヒーロー好きな息子、自由奔放な娘の子育てに奮闘中。