2026.05.28
本連載が想定しているメインの読者が研修医や医学生であることを踏まえて、AI(人工知能)時代の医師の働き方について考えたい。
AIの進化はすさまじく、診断能力や説明能力で医師を超えつつあるというニュースを連日目にする。人間を凌駕(りょうが)している分野がある以上、どの業務をAIが担っていけるかを見極め、実装していくことが望ましい。若い人は、どの業務がAIに移るかを予測し、キャリアの計画を練るとよい。
医師の業務のみならず、コメディカルを含めた「チーム医療」の流れも同じ方向にある。医師の養成と維持にはコストがかかる。そのため、医師を活躍させる場面は要所に絞り、それ以外は他職種とAIが担った方が、社会全体として効率がよいのではないだろうか。この観点もキャリア設計には重要だ。
僕個人の話だが2025年4月から、発達障害や精神障害がある人の就労移行支援事業を手がける「Kaien(カイエン)」(東京都)を手伝うようになった。私は、利用者をサポートする福祉支援員らの教育を担当している。そんな中で、精神科医の介入と、AIの導入によって彼らの業務が円滑になるところを目の当たりにした。
まずは、AIの活用を推進する精神科医がそばにいることで、AIを使うことが「怠け」と非難されず、安心して使える環境ができた。それから、精神疾患のアセスメントが可能になったことで、患者との間で生じるトラブルが、自分の実力不足によるものではなく疾患の問題であり、チームで取り組むべきものと捉え直せるようになった。そして、支援員は利用者の主治医とも連携を取っており、彼らから伝えられることの意図が分からず萎縮することがあったが、AIもしくは精神科医が解説することで解消した。
いくつかのボトルネックがなくなり、彼らのアセスメント能力や支援の見立ては格段にレベルアップしたように思う。心理的負担も軽くなったと聞く。
これがまさに、何を引き継ぎ、何を残すかの見極めの実例だ。正直なところ、医師にはコミュニケーションが苦手な人も多く、支援員らの方が患者のためになっている場面は少なくない。医師免許を盾に傲慢(ごうまん)な医療を行ってきた医師らは、襟を正さねばならない時が来るだろう。それは多くの人にとって、望ましい変化だと思う。
何をAIに引き継ぎ、何を自分の手元に残すか――。その問いに早く向き合った人こそ活躍する未来が来る。若い人たちには、AIと人間のハイブリッドモデルを意識しながら、キャリアを設計していってほしい。
益田裕介(ますだ・ゆうすけ)
1984年生まれ。岡山らへん出身。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。防衛医科大学校卒業、陸上自衛隊勤務後、民間病院を経て、2018年4月より東京都内の早稲田大学横で個人開業医をしている。19年12月からYouTubeもやっている変な人。酒が好きすぎて、心身を壊しそうだったので20年6月から断酒中。そのことを自慢に思っている。週6~7勤務も疲れてきたので、勤務日を減らしたいけれど、貧乏性なので減らせない。こんなに頑張って働いているお父さんなのに、8歳になる娘からは「変態おじさん」なるあだ名を拝命しました。
月曜のマミンカ
神奈川県川崎市在住のイラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナー。 2022年、絵本「カモンダメダメモンスター」を出版後、こどもと楽しめるワークショップを不定期で開催。 4匹の保護猫とヒーロー好きな息子、自由奔放な娘の子育てに奮闘中。
HP: https://mondaymom.official.ec/
Instagram: https://www.instagram.com/mondaymaminka/