2026.04.09
もし「あの人はなぜこんな行動を? なぜそんなことを言うのか?」と疑問に思ったら、研修医をはじめ医師の皆さんは、ぜひ精神医学に立ち戻ってみてほしい。心は脳である。
他人から受ける「意地悪」をそれと気づくことは、とても難しい。なぜなら、大人が行う意地悪の多くは「正しさ」の衣をまとっているからだ。「ここ、間違ってるよ」「こうした方がいいと思うけど」「前にも言ったよね」。一つ一つは、もっともな指摘に聞こえる。だから受ける側は意地悪に気づかず、「自分が悪いんだ」とただ申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
しかし、少し俯瞰(ふかん)してみると、その指摘は、「なぜそんなことを言うのか」と思わざるを得ない重箱の隅をつつくようなものではないだろうか? 成果や努力には決して触れず、小さなミスを拾い上げ、弱く情けない人間像を押しつけるものではないだろうか? それはもう「助言」ではない。モラハラである。
そしてもう一つ、注意してほしいことがある。その相手が、時にこちらを特別扱いし、持ち上げてくる場合だ。「君がいないとダメだ」「君は本当にすごい」と。それなのに、ある日突然、まるで別人のように否定し始める。かと思えば、また褒め出す……。この「理想化とこき下ろし」の繰り返しに、心当たりはないだろうか。
これは相手の性格が悪いという単純な話ではない。境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害など、B群(衝動的で不安定な感情が特徴で、他者に働きかける行動が目立つ)のパーソナリティ障害でよくみられる現象で、診断基準を満たさないグレーゾーンの人であっても、時々取ってしまう言動だ。
パーソナリティ障害は、まだまだ社会的には認知度の低い病気だろう。それは医療現場でも同様で、医療業界で起こるハラスメントは、心理的安全性の低さや過重労働にまつわるものの他にも、未診断のパーソナリティ障害ないし「グレーゾーン」の人たちが絡むものがあると思う。「意地悪」を受けていても、あなたは悪くない。安心してほしい。
社会的に、うつ病や発達障害への理解は進んできている。パーソナリティ障害についても、周囲の人たちが理解することが必要だ。彼らに接する人が自分の心を守り、なおかつ彼らを支えることができれば、組織や社会にとって好影響がある。そして、パーソナリティ障害の人たちも自己理解が進み、生きやすくなるだろう。
益田裕介(ますだ・ゆうすけ)
1984年生まれ。岡山らへん出身。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。防衛医科大学校卒業、陸上自衛隊勤務後、民間病院を経て、2018年4月より東京都内の早稲田大学横で個人開業医をしている。19年12月からYouTubeもやっている変な人。酒が好きすぎて、心身を壊しそうだったので20年6月から断酒中。そのことを自慢に思っている。週6~7勤務も疲れてきたので、勤務日を減らしたいけれど、貧乏性なので減らせない。こんなに頑張って働いているお父さんなのに、8歳になる娘からは「変態おじさん」なるあだ名を拝命しました。
月曜のマミンカ
神奈川県川崎市在住のイラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナー。 2022年、絵本「カモンダメダメモンスター」を出版後、こどもと楽しめるワークショップを不定期で開催。 4匹の保護猫とヒーロー好きな息子、自由奔放な娘の子育てに奮闘中。
HP: https://mondaymom.official.ec/
Instagram: https://www.instagram.com/mondaymaminka/