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2026.07.10

麻酔科医 川久保弥知のシン・言いたい放題! 第3回「気管挿管 ビデオ型が普及する今、直視型の習得は必要か?」

初期研修医の皆さんは、麻酔科研修で気管挿管(気道確保のために、気道にチューブを挿入・留置すること)をする際、「マッキントッシュ喉頭鏡(こうとうきょう)」と「McGRATH MACビデオ喉頭鏡(McGRATH)」のどちらをよく使っていますか?

なぜこんなことを急に聞いたのかというと、初期研修医が気管挿管をする際、指導する側もされる側も、目の前の患者の安全と技術習得とのバランスについて迷うことがあるのではないかと考えたからです。今回は、初期研修医は喉頭鏡をどう使い分けるべきかについて、私の考えをお話ししたいと思います。

私が直視型を使い続ける理由

気管挿管に用いる喉頭鏡には、マッキントッシュのような「直視型喉頭鏡」と、McGRATHのような「ビデオ喉頭鏡」があります。直視型喉頭鏡はずっと前から使われていたもので、医師が直接喉頭・声門(気道と食道の分かれ目)をのぞくタイプです。一方、ビデオ喉頭鏡は2000年代の初めごろから使われ始め、モニター画面に喉頭の映像を映しながら確認するため、視野が良く声門を確認しやすいといった特徴があります。

挿管成功率や扱いやすさの面では、ビデオ喉頭鏡が優れています。日常の診療においては、「もう全部McGRATHでよいのでは?」と思うこともあります。

それでも私は、現在でもマッキントッシュを主に使っています。それは、マッキントッシュしかない環境が、今も少なからず存在するからです。予算が限られている病院などです。麻酔科医は、どんな環境でも気管挿管ができることが求められます。実際、私はマッキントッシュしかない救急車の中で、気管挿管を一発成功させた経験があり、普段から練習していてよかったと感じました。

麻酔科専攻医には「どちらが必須?」

実際の意見が知りたかったため、私の個人Xアカウントで、麻酔科医向けに以下のアンケートを行いました。麻酔科専攻医はマッキントッシュ喉頭鏡の使い方を習得すべきかどうかを聞いたのです。回答してくれたのは214人でした。

私は、9割くらいはマッキントッシュ派だと思っていました。しかし、結果は予想外のものでした。「ビデオ喉頭鏡で十分」と答えたのが59人で、全体の28%を占めたのです。意外にも、ビデオ喉頭鏡派が多い結果でした。

ビデオ喉頭鏡で十分と答えた人は、目の前の患者のことだけを考えるのであれば、便利で安全性や成功率の面でも優れているとされる方を選ぶべきだという意見ではないかと推測します。

一方で、「マッキントッシュは必須」が多数派だったのは、「麻酔科医である以上、マッキントッシュを含めさまざまな気道確保器具を扱えるべき」という考えが根強いためだと思われます。

 

もっとも、私の勤める病院にはMcGRATHが2台しかないので、全例をMcGRATHで行うというぜいたくはできません。また、個人的な意見ですが、マッキントッシュのような直視型喉頭鏡の方が「麻酔科医」のギミックとして格好いいですからね。

研修医にはビデオ型 「成功する」「無理をしない」ための選択

では、麻酔科医ではなく研修医はどうすべきでしょうか。私は、研修医こそ最初から成功しやすい道具を使うべきだと思っています。麻酔科医に求められるのは、「どんな状況でも失敗しないこと」と「失敗してもカバーできること」です。一方、研修医に求められるのは、「できるだけ成功すること」と「難しいと思ったら無理をせず助けを呼ぶこと」だからです。

先ほどのアンケートでは、研修医にマッキントッシュとビデオ喉頭鏡のどちらを推奨するかも聞いています。この質問に答えてくれたのは70人です。結果は「ビデオ喉頭鏡を推奨する」という意見が49人で全体の70%を占め、多数派でした。

マッキントッシュ推奨は16%(11人)でした。マッキントッシュによる挿管には、喉頭展開(気管挿管の際に声門を直視できるよう、喉頭を切り開くこと)の基本が詰まっています。そのため、マッキントッシュ推奨派がいるのも納得できます。ちなみに、私は「研修医の希望によりけり」派です。研修医の自主性は尊重したいと考えているからです。

興味深いのは、麻酔科専攻医と研修医それぞれに対しての考え方が真逆だったことです。つまり、ビデオ喉頭鏡の利点は十分に認めつつも、私と同じように「麻酔科医はどんな環境でも気管挿管できなければならない」と考えている麻酔科医が一定数いると考えられます。

研修医は簡単・便利な道具をどんどん使おう

指導医がマッキントッシュを使っているのを見て、「自分もマッキントッシュの練習をしなくていいのだろうか」と不安になる研修医もいるかもしれません。

しかし、麻酔科医と研修医では求められる役割が違います。麻酔科医は難しい症例でも対応できるよう、あえて難しい手技を磨くことがあります。一方、簡単で便利な機器が普及した今、研修医の皆さんは遠慮なく新しい道具をどんどん使っていきましょう!

川久保弥知プロフィール画像

川久保弥知(かわくぼ・みとも)

1987年、高知県生まれ。初期研修までは高知で「育つ」も、麻酔と集中治療の両方を学びたいと思い立ち、後期研修(専門研修)から広島市民病院で研さんを積む。現在は呉共済病院に勤務。Twitter(現X)で麻酔科についていろいろな投稿をしていたところ、日本麻酔科学会の偉い人に拾われ、学会公式アカウント開設に携わる。
最近の趣味は、子どもと一緒に始めた「ポケモンカードゲーム」。どうせやるなら本気で、と親子で大会にも参加している。

X:@MitomoKawa

月曜のマミンカプロフィール画像
イラスト

月曜のマミンカ

神奈川県川崎市在住のイラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナー。 2022年、絵本「カモンダメダメモンスター」を出版後、こどもと楽しめるワークショップを不定期で開催。 4匹の保護猫とヒーロー好きな息子、自由奔放な娘の子育てに奮闘中。

HP: https://mondaymom.official.ec/

Instagram: https://www.instagram.com/mondaymaminka/