2022.07.26
夫婦の形は人それぞれ。同性婚や選択的夫婦別姓に関して盛んに議論がなされるなど、時代とともに多様化しています。ある女性医師は夫が「専業主夫」で、生活スタイルとしては少数派です。そんな彼女が、婚活の失敗談や結婚の決め手について語っています。
「同性婚」や「選択的夫婦別姓」の実現を望む声が年々大きくなるなど、性別にまつわる価値観は時代と共に変化しています。「夫が稼ぎ、妻が家事をする」というかつて一般的だった考え方は古くなり、現在は共働き世帯が大多数を占めているというデータもあります。
そんな中、このコラムを執筆している湊しおり医師は、自分が生活費を稼ぎ、専業主夫の夫が家事を担当する生活スタイルを取っています。そんな二人の暮らし方は、周囲の人たちから興味を持たれることが多いといいます。
多様な価値観を知ってもらうため、「専業主夫と暮らす」をテーマに、湊医師が今に至る経緯や「夫婦観」について、上中下の3回にわたって紹介します。今回はその第一弾です。(マイナビRESIDENT編集部)
文:湊しおり<藤田医科大学 総合診療プログラム(藤田総診)>
私の夫は、専業主夫です(時にはパートをしています)。2017年に結婚し、19年に職場と居住地を変える際に、仕事を辞めました。誰かにとって何かの参考になるかもしれないので、夫と私の暮らしについて、少し書こうと思います。
夫との出会いは、医療情報担当者(MR)さんからの紹介がきっかけでした。住んでいる家がめちゃくちゃ近いとか、二人ともビールが好きだとかで、何となくよく会うようになって、今に至ります。
実は、夫と出会うちょっと前に、数年間にわたって「ガチ」で婚活をしていた時期があります。複数の結婚相談所、各種マッチングアプリ、パーティ、コンパに友人からの紹介……とおそらくパッと思いつく婚活手段は、ほとんど使いました。
当時、私は30代前半で、その時も東海地方に住んでいました。実は、東海地方(というか名古屋)は都会の割に結婚年齢が低いのです。だから、見渡しても、マッチングアプリなどで検索しても、なかなか同年代の独身男性がいなくて、もう私の市場は東京しかないと思い、都合のつく週末は上京していました。
金曜の最終の新幹線で東京へ向かって、土曜の朝昼はお見合いを三連続でこなし、夜は前回の上京時に知り会った1、2人とご飯。日曜も朝から1、2件お見合い、昼にも進行中の人とランチをして、名古屋に帰って駅前でコンパ……と、週末だけで10人以上と会うという戦いを繰り返していました。結果、数年かけてのべ3桁人と出会って、3桁万円を使い、惨敗。そして、清く正しい「おひとりさま」として生きていく決意ができた頃に紹介されたのが夫でした。

婚活に疲れ果て、結婚したいという欲が低下した頃だったので、値踏みする気力がなかったというのはありました。夫がこれを見たら怒りそうですが、マッチングアプリでも相談所でも、各種条件を入力し設定する形式の出会いの場だけだったら、おそらく夫には出会わなかったと思います。
最初からピンとくるという感じもなく、自宅が近くて飲みに行きやすい、飲みに行けば楽しい、ビールを注ぐタイミングが抜群というのがあって、会う回数がどんどん増えたため、「単純接触の原理」で好意を抱いたのではないかと思います。あとは、彼は犬を飼った経験があり、また飼いたいと思っていたというのも、私にとってはとても刺さるポイントでした。
付き合い始めて早々に同棲しました。犬を飼える物件に引っ越した翌日に1匹目を飼い始めました。そうなると、チームとしてはもう割と成り立っていて、結婚の話題もとんと出なくなっていました。そして、私がへき地に行くのを決めた時期に、今後もあちこち転々とするなら、結婚した方がもろもろ便利かなと思い、入籍することになりました。
ポイントとしては、(1)夫婦だといろいろな手続きを代行し合える(2)どちらかが集中治療室(ICU)に入るような事態になった時に医師から説明を受けやすい(3)保護犬をもらいにシェルターに行ったら同棲カップルではダメだと言われたので、犬を増やすに当たって婚姻関係は大事だと思った――というような感じです。

「ご主人はニートなんですか(時に、ヒモ夫なんですか?)」と聞かれることがあります。夫は、「主夫」です。パートの主婦をニートって言わないですよね? それと一緒。元々は、サラリーマンをしていました。結婚後もしばらくは兼業主夫でした。私がへき地で働くことを決めた時に確認したところ、フルタイムで働きたいという意向がなく、家事や育犬は苦痛ではないということだったので、「じゃあ仕事は辞めてみよう!」という流れになったのです。
それまでもだいぶ家事はしてもらっていたのですが、それからは家事だけでなく、私の就業に関わる書類や出納の管理も担当してもらうようになりました。家庭という組織を運営するという観点では、私は仕事しかしないのが一番効率が良いという結論に至っています。
個人的には、苦手なことはお金を払ってでも回避したいという考えなので、やりたくないことから解放されてラッキー♪と思っています。
(女医、専業主夫と暮らす<中>に続く)

藤田医科大学 総合診療プログラム(藤田総診)医師。
1984年生まれ。広島大学出身。整形外科専門医、抗加齢学会専門医。
気が多く、衝動性が強いため、壁にぶつかることも多々。いつも思いのままに、勢いで何とかしている。素敵な人と出会う運だけは日本一良いとの自負がある。自分を持て余しつつ、専業主夫の夫とペット(犬4匹、猫2匹)に支えられながら、「何とか生きています」。

イラストレーター。
茨城県つくば市出身。筑波大学比較文化学類・桑沢デザイン研究所デザイン専攻科(プロダクトデザイン科)卒業。
2009年よりフリーランスのイラストレーターとして活動し、書籍・WEB・広告などを中心にイラストを提供している。著書に『赤子しぐさ』など。
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