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2022.08.09

女医、専業主夫と暮らす【番外編・中】

4匹の犬と2匹の猫に囲まれ、専業主夫の夫と暮らす女性医師がいます。妻の稼ぎの方が多いことによる弊害、婚活で相手に求める条件を設定する際の失敗などを赤裸々につづったこの記事は、新しい時代のカップルや婚活中の人たちへのエールです。

「同性婚」や「選択的夫婦別姓」の実現を望む声が年々大きくなるなど、性別にまつわる価値観は時代と共に変化しています。「夫が稼ぎ、妻が家事をする」というかつて一般的だった考え方は古くなり、現在は共働き世帯が大多数を占めているというデータもあります。

そんな中、このコラムを執筆している湊しおり医師は、自分が生活費を稼ぎ、専業主夫の夫が家事を担当する生活スタイルを取っています。そんな二人の暮らし方は、周囲の人たちから興味を持たれることが多いといいます。

多様な価値観を知ってもらうため、「専業主夫と暮らす」をテーマに、湊医師が今に至る経緯や「夫婦観」について、上中下の3回にわたって紹介します。今回はその第二弾です。(マイナビRESIDENT編集部)

文:湊しおり<藤田医科大学 総合診療プログラム(藤田総診)>

我が家の家族構成は、専業主夫兼私の秘書の夫、犬犬犬犬、猫猫です。これだけの頭数のペットを飼える賃貸物件探しは本当に大変で、現在は、築40年で3階建てエレベーターなし、風呂の追い炊き機能なしの部屋に、ペット超過分を払って住んでいます。

私の趣味は「当直」、特技は「散財」なので、経済を活性化させるべく週3回くらいは当直をしています。家に帰る日は午後6時ごろに帰宅し、夫がゆでたササミとブロッコリーを食べて、筋トレして、入浴して、午後8時には犬に埋もれて寝ます。

朝は午前5時過ぎに起きて、犬猫を愛でて、プロテイン飲んでからちょっと運動して出勤します。常勤の病院の勤務が休みの日も大体は当直バイトをしています。バイトがなければ家で完全に寝ているか、半分寝て過ごしています。

対人関係のコンプレックスから始まった結婚願望

正直、女性医師かつアラサーって、一人で生きていくには全然困りません。遊ぶお金もあるし、自分の機嫌を取ることもうまくなっているし、好きな遊び方も見つけているし、仕事もなんとなく慣れてきて楽しい頃です。

結婚は決して幸せのための必須条件ではないと今も思っています。でも私は、自分のコミュニケーション能力というか人間関係の作り方というか、人の輪の中での立ち位置の確保の仕方のようなものにすごくコンプレックスがありました(今もありますが)。過去の恋愛でも、うまいコミュニケーションが取れていなかったという自覚がものすごくあって、最初にパッと盛り上がった後に、ちゃんと相手と向かい合うような良い関係を築けなかったことがずっと気になっていました。

そこから結婚願望につなげるのは、今思うとすごい飛躍なんですが、結婚するってことが他人とまともな関係を築けたことの「合格スタンプ」のように感じていて、どうしてもその証が欲しかったんです。

それと、もう一つ結婚したい理由がありました。研修医の2年目くらいから、それまで飼ったことがないのに、犬が突如として飼いたくなったんです。飼うには、当直で帰れない時に家にいてくれる人が必要でしたし、いざ飼ってみたはいいが、私が愛せなかったというオチになったら犬がかわいそうだから、確実に犬を愛してくれそうな人が欲しいというのも、けっこう大きな動機でした。

結婚はした方がいい?

「結婚はした方がいいですか」と聞かれることがあります。私としては、してもしなくてもいいと思う、というのが答えです。特に日本の結婚制度ってすごく縛りが多いので、「制度がマッチするなら『有り』」くらいの感じでよいのではないでしょうか。私みたいに「まともの紋所」として使いたい人はそれほどいないとして、誰かと一緒にいたいとか家族が欲しいということが理由なら、方法は他にいくらでもあると思います。

我が家は男女カップルなので、数の上ではマジョリティの組み合わせです。でも、女性側が世帯主&稼ぎ頭というだけで、遺族年金の支給など損をすることはたくさんあります。役所でも意味不明に不愉快な思いもたくさんさせられます。夫婦別姓や同性婚に関してもそうですけど、それぞれのカップル・家族に任せればいいことなのに、通例と違うというだけでなぜか非難めいた目を向けたり攻撃したりしてくる。日本のそういう部分が、とてつもなく残念だと、いつも思っています。

パートナー選びは「検索作業」の条件設定をなくすことが大切

交際相手の見つけ方に関しては全然言えることがないので、一足飛びに、結婚相手というか「一生一緒にいてくれや!」と思う相手探しについて言及します。

(モテなかったという大前提はいったん置いておいて)私が婚活であれだけ重ねた連敗の結果を後々振り返って気づいた事実(大金をはたいて得た数少ない財産)があります。それは、今どきの婚活ってほとんどが「検索作業」で、検索の仕方によっては出会える人が全く違ってくるということです。

アプリでも相談所でも、膨大な登録者の中から条件を絞って検索していくわけです。そこにはどうしても年齢・身長・職種・年収・家族構成とかの条件項目があります。日常では特に意識していない項目に初めて向き合うことになり、そうすると、どうしても誰もが「良い」と言いそうな条件を選択してしまいがちです。

男性が年齢と写真(見た目)という2項目のみで相手を絞っていくことが多い(湊調べ)一方で、女性は律儀に全部の項目で条件を設定してしまう人がけっこういるように感じていました。実際のところ、日常生活で出会っていたら、初対面からいきなり長男か次男かなんて気にしないですよね? 婚活の場でもそんな条件は設定しなくてもいいはずなのに、ついつい婚活界隈(かいわい)の空気に流され「次男」を選択してしまう。そうすると、その時点で「長男」には出会えなくなっちゃうんですよね。

リアルな出会いでもそうですが、みんなから見て良い人が自分にとっても良い人だとは限らないと思います。だから、自分じゃない誰かが作った理想像なんか捨て置いて、まずは自分のニーズと需要をよく把握して、自分にだけベストマッチする人を探す努力をすることが大事です。

過去の無意味な条件設定に嘆息 正確な自己分析を

婚活していた時は、年収が自分より上で学歴は早慶以上でとか、相談所の人に言われるがままに私も条件を設定していましたし、「医者はどこでも働けるので~(あなた色に染まれます♡)」みたいなことを平気で言っていました。

でも、そんなうわべの条件設定と本心ではない言葉を使ってお近づきになったとしても、私がへき地で働きたいって言ったときに、東京での仕事を捨てて一緒に来てくれるわけがないし、朝から晩まで犬・猫・私の世話をしてくれるとも思えないし、私が忘れた替えのパンツをバイト先に持ってきてくれるわけないんです。そして、こんな私が、自分以外の誰かに染まれるなんてありえないんです。本当に無意味な条件設定でしたし、過去の自分の自己分析力の低さにもびっくりです。

そもそも、パートナーを作ってチームになるって、個々のプレーヤーとしての能力以上に、チームとしての能力が高くなるから面白いんだと思います。逆もしかりで、組み合わせによっては個々の能力をつぶしてしまうこともあるはずです。

自分がどんな人間で、どんなサポートを提供できて、どんなサポートを求めているかをしっかり把握できれば、後々の「あれれ?」は減るのではないでしょうか。まあ、もしかすると、後々「あれれ?」となっても諦めがつくくらいの壮大なラブストーリーがあるなら、なんでもありなのかもしれませんけどね。

(女医、専業主夫と暮らす<下>に続く)

PROFILE

湊医師のプロフィールイラスト

湊 しおり(みなと・しおり)

藤田医科大学 総合診療プログラム(藤田総診)医師。
1984年生まれ。広島大学出身。整形外科専門医、抗加齢学会専門医。
気が多く、衝動性が強いため、壁にぶつかることも多々。いつも思いのままに、勢いで何とかしている。素敵な人と出会う運だけは日本一良いとの自負がある。自分を持て余しつつ、専業主夫の夫とペット(犬4匹、猫2匹)に支えられながら、「何とか生きています」。

栗生 ゑゐこ(くりう・えいこ)

栗生えいこさんのプロフィールイラスト

イラストレーター。
茨城県つくば市出身。筑波大学比較文化学類・桑沢デザイン研究所デザイン専攻科(プロダクトデザイン科)卒業。
2009年よりフリーランスのイラストレーターとして活動し、書籍・WEB・広告などを中心にイラストを提供している。著書に『赤子しぐさ』など。

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