学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

22. デキる研修医の論文抄読会

「デキる研修医のつくり方」の連載も今回が最終回! 研修医にとっての晴れ舞台ともいえる論文抄読会(各回の担当者が論文を紹介し,他の出席者はそれに基づいて議論をすること)での発表についてご紹介します。

論文抄読会での発表は研修医にとっての晴れ舞台

皆さんは学生時代に医局の論文抄読会(またはジャーナルクラブ)で発表をしたことはありますか? 論文抄読会は単に抄読会とも言われ、どの診療科の医局でも月1回から数回程度の頻度で行われている医局の全体行事の1つです。
全体行事ですので、できるだけ多くの医局員が参加できるように、多くは教授(部長)回診など他の全体行事に合わせてスケジュールが組まれています。

論文抄読会の主な目的は、「医学研究の最新知見をシェアし、吟味することで医局員全体のレベルアップを図る」ことと、「若手医師に論文の探索と批判的吟味、プレゼンテーションのトレーニングを積ませる」こと、すなわち若手の教育が目的です。

研修医の場合は、大体年に6〜12回程度のペースで栄えある抄読会の発表者として出番が回ってきます。自分が発表者となり英語論文を指導医達の前でプレゼンテーションするということは研修医にとって大きなストレスかもしれませんが、研修医が主役として医局員全員から注目される数少ない機会です。
指導医の先生達は皆さんの発表を「勉強の成果」として温かい目で見守っていますので、安心して顔を上げて発表してください。

今回は、皆さんがデキる研修医として指導医達に一目置かれる発表ができるように、抄読会発表における最重要ポイントである「論文選び」のノウハウについてご説明します。

研修医は「取り上げる論文を早く決めて、じっくり時間をかけて英語を翻訳したい」と考えがちですが、実は抄読会の準備において英語を訳すこと自体は大して重要ではありません。
もちろん正確に英語を理解することは大切なのですが、ただ論文を全訳してプレゼンテーションされても指導医としては「お疲れ様」と苦笑いするしかありません。

抄読会発表者として皆さんが伝えるべきメッセージは、「こんなに興味深い論文があったので皆様にご紹介します!」ということです。
指導医達から高く評価される抄読会発表となるかどうかは、翻訳の精度ではなく、論文のおもしろさで決まります。そのために一番時間をかけなければいけない作業が論文選びです。

デキる研修医として、しっかりと「おもしろい論文」を選んで、抄読会発表という晴れ舞台を楽しんでください。

step1いかに「おもしろい論文」を選べるかが抄読会発表における最大のポイント!

聴衆をぐいぐい惹きつける魅力的な抄読会発表となるかどうかの8割は、最初の論文選びで決まると言っても過言ではありません。
論文選びのポイントはいかに「おもしろい論文」かどうか。
論文のおもしろさとは学術的な興味深さです。学術論文として報告されるからには、どの論文でも大なり小なり新規知見があるのは当然です。

しかし、その新規知見が過去の定説を覆すほどインパクトをもっているのか(たとえばiPS細胞など)、それともお茶を濁すような形だけの新規知見なのかは論文次第です。

本当におもしろい論文は、誰が読んでも(研修医でも)おもしろい、興味深いと思える論文です。
「初めての抄読会発表だから、できるだけ簡単な論文を選ぼう」と考えて、大しておもしろいと思っていない論文を安易に選んでしまうと必ず後悔することになりますので気をつけてください。

抄読会発表用の論文探しの第一歩として、まずはPubMed(NCBI:国立生物科学情報センターが作成しているデータベース)検索で表示された論文一覧の中から、「おもしろそうなタイトル」の論文を10本ほどピックアップして軽くアブストラクトを流し読みしてみましょう。
この時点では英語の正確な意味はあまり気にせず、「この論文は何がおもしろいのか? 学術的なポイントはどこか?」という視点で、自分が直感的におもしろそうと感じた論文を絞り込んでいきましょう。

候補論文を5つほどピックアップできたら、次は以下の点で「研修医の抄読会発表用」に適した論文かどうかをチェックしていきましょう。

  • ・鮮度は問題ないか?
  • 原則3〜5年以内の報告が望ましい。古くても10年以内。それ以上過去の文献を選ぶ場合は「あえて取り上げる」ための明確な理由が必要。

  • ・タイトルと内容の乖離はないか?
  • アブストラクトのConclusions(結論)を読んで、ピンとこない論文は要注意。一見おもしろそうなタイトルでも結果が大したことない、という見かけ倒しの論文もある。

  • ・ストーリーは誰でにもわかりやすいか?
  • BackgroundからConclusionsまでざっと読んで、「何を言いたいか」がよくわからないような論文はNG。良い論文は筋道立ったストーリーで、論理的な展開もスムーズ。

  • ・メインディッシュとなる図表はあるか?
  • 優れた論文には一目瞭然なResultsがある。自分がResultsの図表を見て「おおっ!」とインパクトを感じられたならOK(たとえば対照群と介入群でどの程度予後に「差」が出たか)。

  • ・専門領域である程度認められているジャーナルか?
  • 超一流誌を選ぶ必要はないが、それぞれの診療科である程度認知されているジャーナルを選んでおくと無難(大当たりではなくてもハズレのリスクが少ない)。マニアックな雑誌を選んだ場合、たまに方法論自体に問題がある場合もあるので注意 (指導医に一度ジャッジしてもらう)。

  • ・ボリュームは適切か?
  • 研修医のうちは本文のボリュームで5〜7ページ程度が望ましい。あまり長い「大作」を選ぶと苦労するので注意。

上記の5点をチェックして候補論文を2つ、3つまで絞り込めたら、それらの論文が過去の抄読会で取り上げられていないかを念のため確認してください。
医局の秘書さんに「半年前までの抄読会配布資料の原本(もしくは一覧)を見せてください」とお願いして、自分の候補論文が以前の抄読会で使われていないことが確認できればOKです。

ここまでをクリアした候補論文であれば、どれを選んでも「おもしろい論文」であることに変わりはなく、大きな間違いはありません。
もし候補論文の中に、自分が「この論文を一番取り上げて発表したい」と強く思える論文があれば、その論文に決めて抄読会発表の準備を始めてもOKです。

まだ最後の1つに絞り込めないようでしたら、候補論文全てをざっと通読してから最終選考をすることをオススメします。
精読する必要はありませんので、一度候補論文を通読した上で、特にストーリーのわかりやすさを比べてみてください。
まだ慣れないうちは、発表者である自分にとって、できるだけ論理的展開がしっくりきてわかりやすい論文を発表用に選ぶようにしましょう。

しっかりと「おもしろい論文」を選べていれば、発表までの準備(精読、資料作成、読み原稿作成など)もスムーズに進むはずなので、発表本番では「論文のおもしろさ」を十全にプレゼンテーションして、抄読会発表という晴れ舞台を楽しんでください。

プレゼンテーションの最後には、「この論文の知見を、自分はどのように臨床に活かそうと考えているのか」と自らの見解もしっかりと付け加えて、堂々と抄読会発表を締めくくってください。 ]

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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