学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

20. デキる研修医の診察術 検査所見編

患者1人ひとりのベースライン値を考慮して毎回丁寧に検査値を評価し、「真の異常値」をしっかり見極めよう。

の検査結果も「治療方針を検討するための判断材料」として活用しよう!

今回は、研修医が毎日のようにチェックする検査所見(データ)をどのように実際の診療に活用していくか、基本的な考え方を確認していきましょう。

初期研修中にどの診療科をローテートしていても、皆さんは血算・生化学項目に代表される血液検査、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査、その他多くの検体検査や理学的検査をオーダーし、様々な検査所見を評価していくことになります。
毎日ルーチン的な検査データの確認を繰り返す中で、忘れてはいけないことは、「どんな検査項目であれ、検査とは治療方針を検討するためにやっている」ということです。

少なからず手間や時間、医療コストをかけて検査をするからには、「新たに薬剤を追加するか? 変更、中止するか? もしくは経過観察とするか?」など、治療方針検討の判断材料として検査結果を活用しなければ意味がありません。

たとえば毎週月曜に担当患者全員の定期採血を入れているのに、漫然と「正常範囲内の値だからとりあえず問題なし」というアセスメントだけでは不十分です。
皆さんが初期研修を行う大学病院や総合病院では、できない検査はないと言ってもよいほど、様々な検査を時間帯に関わらず(当直帯でも)施行することができます。
しかもオーダー時に「至急」というコメントをつければすぐに結果を出してくれます。

そのため、仕事に慣れてきた研修医の中には診察や臨床推論をなおざりにして、何でもかんでもとりあえず検査をオーダーし、検査結果が正常範囲内か異常値かだけしか見ずに診療してしまう人もいます。
スクリーニング目的であっても検査をオーダーしたからには、単に「結果が正常範囲か否か」ではなく、自分で責任を持って「今回の検査結果を踏まえて、どのように治療方針を検討するか?」をしっかり考えて診療にフィードバックしてください。

検査結果を診療にフィードバックする際のポイントは、「時間軸に沿った検査所見の変化から病勢の推移を評価すること」と、「検査正常値(基準値)を鵜呑みにせずに病的意義を判断すること」です。
2つとも当たり前のことのようですが、研修医にとってはしばしば見落としがちなことですので、この機会にしっかりと見直しておきましょう。

step1検査所見の経時的変化から病勢を評価しよう!

治療方針を検討するための判断材料として検査所見を活用するためには、点ではなく線で評価する必要があります。
病勢の評価指標となる検査項目(白血球数、Hb(ヘモグロビン)、その他疾患特有のマーカーなど)が、前回検査時と比べて上がっているのか下がっているのか、検査データや検査所見の経時的な変化をよく見て評価しましょう。

経時的な変化を考慮して検査データを見ることは基本中の基本です。
1つひとつの検査結果は、ある一時点での「点」の評価しかできません。
過去の検査データからの経時的な変化をよく見て、疾患の病勢が「良くなって来ているのか」、「悪くなっているのか」を判断してください。

朝の回診中、指導医に「肺炎の患者さんの今朝の白血球数はどうだった?」と聞かれて、「12,000でした!」と今回の検査値をそのまま答えるだけでは及第点ギリギリです。
「昨日の16,000から12,000に低下して良くなっていました!」と回答してくれるのがデキる研修医です。

SpO2のように同じ98%という数値であっても酸素投与量によって解釈が違ってくる項目なら、「SpO2はマスク5Lで98%です。」と測定時の条件も合わせて伝えましょう。
また、初期研修に忙殺されている中では優秀な人でも視野が狭くなり、検査項目の変化を見落とすこともあります。

たとえば肺炎の患者さんには白血球数やCRP(C-反応性たんぱく)にばかり目がいってしまい、正常範囲からじわじわと進んだ肝機能障害に気付くのが遅れるなんてことはよくあります。
自分の担当患者さんの検査結果は、全員全項目で経時的変化をしっかり把握して、日々の診療にフィードバックしていきましょう。

point2患者個々のベースライン値を意識して病的意義を見極めよう!

経験豊富な臨床医にとって、検査結果が正常値(基準値)だからと言ってもそれを鵜呑みにせず、個々の患者ごとに病的意義を判断するということは基本中の基本です。

しかし、経験の浅い研修医の時点でそれを意識できている人はなかなかいません。研修医と上級医の大きな違いの1つは、患者ごとに病的意義の有無を判断して診療できるかという点です。

もちろん、確定診断や手術適応を決定する際には診断基準やガイドラインに明記された検査値を元に考えるのが基本です。
しかし、研修医として病棟で入院患者さんを診療していれば、「正常値イコール病的意義なし」もしくは「異常値イコール病的意義あり」とクリアカットに判断できないケースにしばしば遭遇します。

皆さんがどこの大学であっても、講義で先生に聞いたであろう「検査の正常値は、あくまで基準値であって、異常そのものではない」という言葉を思い出してください。
その言葉通り、検査項目の「正常値(基準値)」は、原則「健常人の多くがその範囲に収まる」という範囲の値を意味しています。

ですので、その正常値の範囲内に収まっていることと「異常がない」ことは必ずしも一致しません。
たとえ病気であっても初期には正常範囲内ですし、逆に治りかけのときも正常範囲内です。
そして個々の患者ごとのベースライン値によっても、検査の正常or異常と病的意義の有無が乖離する場合があります。

たとえば、「喉が痛い」と言った患者さんの白血球数が9,000台(左方移動なし)と軽度高値を示したからといって、「細菌性咽頭炎に違いないから抗生剤を投与しよう!」と決めつけてしまうのは早計ですよね? 

その患者さんが喫煙者などで元から少し白血球数が高く、過去数回の検査で白血球数が9,000~1,0000で推移していたのなら、今回の白血球数も実はベースライン値から上昇しておらず、咽頭痛の原因はウイルス性咽頭炎であるか、それ以外に原因があると考えられます(もちろん診察所見も考慮して判断)。

皆さんもこれまで、検査結果が異常値なのに「問題なし!」とか、一見正常値なのに「精密検査だ!」と上級医が的確に判断する場面を見て、「この先生すごい!」と感心したことがあるんじゃないでしょうか?

上級医のように正常値の枠を超えて病的意義を判断するためには、患者個々のベースライン値を意識して検査値を見ることが重要です。 それぞれの検査項目は患者の年齢や性別、体格、基礎疾患、生活習慣などによって影響を受けますので、患者ごとに状態が安定している時の検査値を元にベースライン値を推測してみましょう。

1人の患者の特定の検査項目に注目してその変動の幅をよく観察してみると、患者ごとのベースライン値というのは意外と安定しておりそれほど変動なく推移していることがわかるはずです。
患者1人ひとりのベースライン値を考慮して毎回丁寧に検査値を評価することで、「真の異常値」をしっかり見極めることができる研修医になってください。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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