学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

16. デキる研修医のコミュニケーション 外科ローテ編

前回記事では、内科ローテを想定して「○○(相手)とのコミュニケーション」に焦点を当てた研修医のコミュニケーション術を紹介しましたので、今回は外科ローテ中の「○○時(状況)にどう動くべきか?」に焦点を当てたコミュニケーション術についてお話しします。

動けるかどうか、先手必勝のフットワークが鍵

状況がダイナミックに変化する外科においては臨機応変に動けるフットワークが非常に重視されます。
外科においては「動けない研修医」=「デキない研修医」です。
たとえ頭の中でどれほど論理的に考えていても体を動かせなければ全く評価されません。
勿論、何も考えずに突進してしまう猪突猛進タイプの研修医は危なっかしくて仕方ないのですが、「とりあえず動く」という点では「全く動かない研修医」よりいくぶんマシです。

今回は、外科ローテ中に研修医として「手を動かす」ために、まずは代表的な3つのシーン(病棟回診時、オペ時、急変時)で動くためのコミュニケーション術を予習しておきましょう。

○○時に動けるか!? 外科研修医に求められるコミュニケーション

  • step1病棟回診時は、先を読んで包交に加わろう!
  • step2オペに入る時は、必ず術式の予習をしておこう!
  • step3急変時は、ベッドサイドで2番手として動こう!
 

外科研修医は手を動かすことが大事といっても、無闇やたらに動かれては周りのスタッフにとって良い迷惑です。
「この状況において何が問題で、自分に何かできることはあるか?」という意識で常にアンテナを張りつつ、先手をとって周りのサポートを中心に手を動かすようにしましょう。

包帯交換時にすっと鑷子(せっし)を差し出すのも、オペ時にさっと出血部位にガーゼをあてるのも、専門技術ではなくコミュニケーションの一つです。
常時アンテナを張って、自分にできること、サポートできることがあればどんどん手を出して外科のチーム医療に参加していってください。

step1病棟回診時は、先を読んで包交に加わろう!

外科ローテ中にその研修医が「動ける研修医」か「動けない研修医」か、一番わかりやすく差が出るのが、日々の病棟回診のときです。
問診と診察が回診の中心だった内科と違い、外科では手術後の患者さん達の「包帯交換」も行いながら病棟回診を行います。
学生時代のBSL(細菌・ウイルスなどを取り扱う実験施設の分類)で外科を回っていた時のことを思い出してください。
毎日の病棟回診の中で、患者さんの創部を保護しているガーゼを外し、創部を観察・消毒し、新しいガーゼに交換していたはずです。

この包帯交換の処置は、よく「包交(ホーコー)」と略して呼ばれます。
研修医初日に外科医の先生から「今から回診するから、包交車(もしくはカート)持ってきて!」と言われたら、キビキビと動いて病棟の処置室に置いてある銀色のカート(包交車)を押して持っていきましょう。
万が一「包交車」の意味がわからずボケっとしていると、初日の朝から置いてかれてしまうので気をつけてください。

病棟回診中は、先生たちとぞろぞろと列を作って病室を回ります。
研修医の皆さんは、できるだけ列の先頭を歩いて真っ先に病室に入るようにしましょう。
学生時代は外科医達の後ろをついて部屋に入り見学していただけかも知れませんが、研修医となった今の皆さんには回診で常に先頭を歩き、病室に入れば率先して包帯交換をすることが求められます。

病室のノックから、患者さんへの挨拶、今朝の体調を問診しながら、顔色やドレーン等も観察しつつテキパキと包帯交換の準備を始めましょう。
ローテ初日の2、3人ぐらいは様子見でサポート役に徹し、その診療科の作法に慣れたら消毒〜ガーゼ固定にも手を出すようにしましょう。
診療科ごとに使う物品や手順が多少違いますので、最初に手伝いながらスタッフの先生のやり方をよく観察して、その診療科の包交を覚えてください。

手術と一緒ですが、術者に「○○ちょうだい」と言われてから手を動かし始めてはちょっとデキない研修医です。
包交の流れがスムーズに進むよう、「○○」と言われる前に先に準備して待ち構えておきましょう。
「○○」に入るのは大体、鑷子、消毒(消毒液に浸した綿球のこと)、ガーゼの3つのどれかです。
外科医が消毒しガーゼが創部に置かれたら、テープで固定して着衣を整え、ベッドの高さを戻し、患者さんの希望を聞いて体の位置(枕、布団も)も調整してあげてください。
最後に外科医の先生から「まとめの挨拶(傷口は順調ですね。今日から○○して大丈夫ですよ。など)」があり、包交は無事終了になります。

包交のサポートに慣れてリズムよく動けるようになったと感じたら、病室を出て次の部屋に向かうまでに「次の包交は、私に消毒やらせてもらってもよいですか?」と外科医の先生にお願いしてみましょう。
初日からなかなか積極的な研修医だなと感心して快くOKしてくれるはずです。

point2オペに入る時は、必ず術式の予習をしておこう!

外科ローテの醍醐味と言えば手術。ローテ後半(2年目)の優秀な研修医であれば、状況(術式など)が許せば前立ち(執刀医の正面の第1助手)をやらせてもらえる可能性もゼロではありません。
手術参加の充実度は執刀医の位置にどれだけ近いかに大きく影響されます。
術野もほとんど見えない位置から台に乗って(さらに背伸びして)見学したり、手洗いをしてオペに入っても4番手(第3助手)として数時間ひたすらかぎ持ちだったりの学生時代とは「オペに参加している感」が全然違います。

実際、自分が執刀医か第1助手として手を動かしていると長い手術で何時間立ちっぱなしでも全然平気(逆に時間を忘れる)なものですが、術野も見えない位置ではたった1時間の手術も長く感じるため、研修医によっては「どうせオペに入っても何もさせてもらえないし、早く帰るために病棟で処置を片付けとこう」とオペに入ることを敬遠してしまう人もいます。

研修医の立つ3番手4番手の位置はメスにも鉗子にも糸にもほとんど触りません。
だからといって「せっかく糸結びの練習したのに、あそこの外科は研修医に何もさせてくれない」なんて文句を言うのは筋違いです。
外科医に言わせれば「何の準備もしてきていない研修医に何もやらせられるか」ということになります。

優秀な外科医の先生ほど、患者さんのためにベストの手術を考えています。
どんな手術だって真剣勝負ですから、「研修医の練習」を兼ねて手術をやらせるわけにはいきません。
外科医に「この研修医にならある程度やらせてもよいな」と思われ、オペに入って手を動かすことを許されるかどうかは、皆さんの事前準備にかかっています。

糸結びなどの基本手技の練習は当然として、自分が手洗いをしてオペに入る時は必ず術式の予習をしておいてください。
短期間でローテする中で各科ごとに全然違う術式の予習をするのは大変ですが、これをしておかないと実際の手術で今どこまで進んで何をしているのかがわからず実りの少ない手術参加になってしまいます。

国家試験前に疾患ごとの主な術式は学んだでしょうが、実際の術野は模式図のようには見えませんので、今見えている血管が何なのかすぐに見失います。
ローテ中に自分の入るオペが決まったら、医歴3〜6年目ぐらいの若手医局員の先生をつかまえて「明日、○○のオペに入るんですが術式の予習をするのに何か良い教科書かマニュアルの冊子ってないでしょうか?」と聞いてみましょう。

医局にある分厚い(しかも英語の)教科書や、上の先生が若手のために書いたお手製のマニュアルなんかを紹介してくれるはずです。
先生の時間が許せば、同じオペをした他の患者さんのオペ記事(手術記録)を一緒に見ながら、「手術のポイント(コツと注意点)」を教えてもらいましょう。

術式をよく予習しておけば、3番手以降の位置からでも手術がぐっと楽しくなります。
「今は何をしていて、この先どんなことをするから、何に注意しなければならないのか」をイメージしながら、3番手からでも積極的にガーゼやサクション(吸引)の補助で手を出していきましょう。

point3急変時は、ベッドサイドで2番手として動こう!

意識レベル、血圧や脈拍、SpO2などのバイタルサインが急に低下し、状態が急激に不安定になることをいわゆる「急変」と呼びます。
急変はどの病棟、どんな入院患者さんにも起こりうるものですが、特に手術後の患者さんの多い外科病棟では急変イベントは多くなります。

急変と言うからにはいつ起こるか予測はできません。自分が病室にいようと廊下を歩いていようとナースステーションでカルテを書いていようと、どんな状況でも急変に居合わせることがあります。
BSL時代にナースステーションにいた時に、モニターのアラームが鳴り響き、病棟医と看護師さんが病室に向けてダッシュしていく光景を見たことがある人もいると思います。

そんな急変時は病棟で手の空いているスタッフが片っ端から集まってきて、チーム医療で処置(ACLS(二次心肺蘇生法)含む)にあたります。
学生の時は見ているだけで許される側でしたが、研修医となったらダッシュするのは当然として、現場にたどり着いてから「手を動かす」ことが求められます。

しかし、働き始めの研修医は、その急変時対応のチーム医療の輪にうまく入れず、後ろの方で眺めているだけになってしまうことも少なくありません。
確かに、何をしていいのかわからず遠慮してしまう気持ちはわかるのですが、研修医としては周りを押しのけて、ベッドの近くに行くぐらいの積極性を見せて欲しいものです。

急変の多くは、不整脈、脳血管イベント、出血(術後)で、そのうち少なくない割合で心肺蘇生が必要になります。
皆さんが将来外科や救命救急、循環器内科などに進めば嫌でも日常的に急変に出くわしますが、そうでないなら外科ローテ中などの急変の多いローテ中にしっかり学んでおかないと、専門科に進んだ後いざというときに動けなくなります。
いくら教科書で読んで知っていても、人間、やったことのないことはできません。

とはいえ、外科ローテ中の急変時に必ず心停止が起きるわけではありませんし、ここでACLSの知識がどうとか言うつもりはありません(それでもBLSぐらいの対応は迅速にできるようにしておいてください)。
研修医として急変時にしなくてはならないことは、まずベッドサイドまで行って外科医の先生をサポートする2番手として動くことです。
1番手として動く外科医の先生は司令塔です。

司令塔の指示を聞き漏らさないように集中しながら、患者さんの横に行って手を触れ(末梢温)、脈を取りつつ、顔色を見ながらモニター、酸素、体位の状況を確認しましょう。
SpO2(動脈血酸素飽和度)が低下しているなら、さっと酸素流量を上げるぐらいはまず手を動かしましょう。

急変時は、病室での初期対応の後、処置室や手術室に移動して治療を行うことがよくあります(緊急内視鏡や緊急手術)。
ベッドからストレッチャーに移動の際は、「1、2の3」と合図も含めて積極的に動きましょう。
その際、点滴やドレーンチューブ、コード類などが絡まったり、引っ張られたりすることもあります。
点滴のチューブが圧迫されて薬剤が体内に入っていなかったということもあります。

2番手として司令塔の指示を受けて動きつつ、患者さんとその周りをよく観察し周辺デバイス類の整理も含めて「気がついたことがあれば手を動かして」急変時対応をサポートしてください。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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