学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

15. デキる研修医のコミュニケーション 内科ローテ編

「周りの人全員が自分の先生」という新人の立場を活かして、院内で出会う様々なスペシャリスト達から積極的に仕事術を吸収しましょう。

院内スタッフとの日頃のコミュニケーションこそ、研修医にとってのチーム医療

近年、多くの病院でチーム医療の強化が推進され、院内の専門治療チームに多職種のスペシャリストを集めて組織化が図られています。

研修医がチーム医療を学ぶにあたって大切なことは、華やかな専門治療チームの連携(たとえば心臓手術の際の心臓外科医、麻酔科医、オペ看、MEの連携などの)を追いかけることではなく、自分が関わる院内の様々なスタッフとの日頃のコミュニケーションこそが研修医に求められるチーム医療の形だと自覚することです。

学生実習は「自分、担当患者、指導医」しか登場人物がいなかったでしょうが、研修医になると仕事を通じて非常に多くの医療スタッフと関わりを持つようになります。
そんな研修医生活を始めるにあたって覚えておいて欲しいのは、「自分一人でできる仕事は非常に少なく、最初は何をするにも誰かに助けてもらうことになる」ということです。たとえ模試で全国1位をとった学生でもそれは変わりません。

そして助けてもらう「誰か」は、指導医などの医師だけではなく、看護師から清掃スタッフまで院内で働く全ての人々です。
皆さんは医師である以上、ベテランのメディカルスタッフたちからも医療チームのリーダーとして扱われ、医師としての権限を持つことになりますが、職場の中ではただの新人スタッフであり、「一人で何もできない」のは当然です。

もし「自分は研修医だからって舐められたくない」なんて気持ちを自覚したら、その場ですぐに捨てましょう。「周りの人全員が自分の先生」という新人の立場を活かして、院内で出会う様々なスペシャリスト達から積極的に仕事術を吸収してください。

こんなときには○○さんに! 研修医のための院内コミュニケーション

  • step1○○時指示の出し方に困ったら病棟看護師さんに
  • step2書類や手続きに関することなら病棟事務さんに
  • step3薬剤師さんからの処方確認には心からの感謝を
 

今回は、内科ローテ中を想定して研修医がどんな形で院内スタッフに助けてもらうことになるのか、代表的なシーンを3つほど紹介します。

堂々と誰かに相談できるのは研修医の特権です。逆に研修医になったばかりで本来経験が不足しているはずなのに、自信満々といった感じであれやこれや独断でやってしまう研修医は、指導医にとって恐怖の部下です。

いくら医師でも職歴としては自分が一番の新入りということを自覚して、
「新入りで経験不足なので色々と教えてください。お忙しいところありがとうございます。」と、
「謙虚な姿勢」と「感謝の気持ち」を忘れずに、どんどん院内他職種とコミュニケーションをとって行きましょう。

step1○○時指示の出し方に困ったら病棟看護師さんに

内科ローテ中は、指導医と一緒に大体5〜10人の患者さん受け持つようになります。そして担当患者さん達に対する業務で皆さんがもっとも回数をこなすことになるのは「指示出し」です。

4月の中旬ぐらいまでは、指導医の先生が率先して指示を出してくれたり、PCのオーダー画面を一緒に見ながら教えてくれたりしますが、ある程度時間が経てば研修医と言えど一人の担当医として自分で判断して患者さんの指示をオーダーせねばならなくなります。

特に研修医を悩ませるのは、ある特定の条件に対応した「○○時指示」(発熱時指示、疼痛時指示など)といった指示の出し方です。
いくつかの科をローテした後なら、経験をもとに適切に指示出しもできるでしょうが、慣れないうちはどんな条件に対応してどんな指示を出せばいいのか相場がわかりませんし、病棟によってお決まりの作法があったりします。

そんなとき、自分一人で悩んで貴重な時間をロスする必要はありません。「○○時指示」には、だいたい病棟ごとに定番パターンが決まっているので、それをテンプレに担当患者さんに合わせて微調整してサクッと指示出しすれば良いのです。

病棟の看護師さんに、「○○さんの疼痛時指示を出そうと思うのですが、この病棟では通常どんなパターンの指示が多いですか?」と聞いてみましょう。「うちの病棟の先生は、1.○○○、2.○○○とかって出す人が多いですよ」と指示の定番パターンを具体例で教えてくれるはずです。

聞くときには「この病棟では・・・多いですか?」といった表現で郷に入れば〜の精神を匂わせることが大切です。
ただ単に「何て指示出しすればいいですか?」という聞き方をしては「それは先生が考えることでしょ? 指示の出し方なんて指導医の先生に聞いてください」と看護師さんを怒らせてしまうのがオチです。

もちろん、病棟にいる看護師さんの中でも、別の作業をしている方(処置の準備中、ラウンド中、申し送り中)は避けて、PC前に座って看護記録などを書いている方を狙って「忙しいところすみません」と話しかけましょう。

研修医が一番話しかけやすい若手医師は大抵バタバタと院内を動き回っていてなかなか捕まりません。
その病棟に何年も勤めているベテラン看護師さんともなれば、下手な若手医師よりも的確なアドバイスをくれるはずです。

point2書類や手続きに関することなら病棟事務さんに

「この仕事、どうやればいいか全く見当つかない」と研修医が途方にくれる仕事は、実は医療行為そのものではなく大半が書類や手続きに関する仕事です。

病院に勤務する医師の業務には、医療行為だけではなく書類の記載や種々の手続きの申請も含まれています。
私たち医療従事者が提供する医療サービスは様々な仕組み(保険制度など)の上に成り立っていますので、患者さんが入院してから退院するまでに各方面に提出or申請しなければならない書類が沢山あります。

しかもその多くは「医師」が記載するものとなっています。
当然研修医も資格上は立派な「医師」ですので、皆さんは右も左も分からないうちから四苦八苦しながらそれらの書類を処理しなければなりません。
内科ローテであれば必ず指導医とのコンビ体制で患者さんを受け持つので、書類処理をするのは研修医と指導医どちらでもいいのですが、指導医にとってそれらの書類処理は面倒なルーチンワークですので、自分の下についた研修医にはできるだけ書類の処理を任せたいと思ってしまうのです。

優しい指導医であれば、研修医に何も言わずに全ての書類を自分で処理したり、丁寧に教えてくれます。
説明もなしに「○○くん、この書類書いといて。」とお願いする先生もいます。

そんなときに頼りになるのが病棟の受付にいる病棟事務さんです。
病棟事務さんは入院患者さんの入院から退院までに必要な書類・手続きについては病棟の誰よりも専門家です。
病棟における患者さんやご家族の窓口となる病棟事務さんは優しい方ばかりで、基本的に日中9〜17時の時間帯で受付につめています。

自分が任された書類をある程度書いてから
「この書類初めて書くことになったのですが、何か注意点があったら教えていただけますでしょうか?」と質問してみましょう。

手続き・申請などに関してであれば
「○号室の○○さん、○○の申請を出しておくように言われたのですが、必要な書類と提出先を教えてもらえますでしょうか?」と相談しましょう。

研修医にとって、医学知識でカバーできる医療行為よりも、学生のときには全く縁のなかった書類や手続き業務の方が難題となることはしばしばあります。
病棟事務さんにとっても「慣れない書類仕事に困っている研修医」は見慣れた光景ですので、きっと優しく丁寧に教えてくれるでしょう。

point3薬剤部からの処方確認には心からの感謝を

内科ローテ中は、毎日のように内服薬、注射薬をPCのオーダー画面から処方することになります。
はじめは指導医と一緒にやりますが、何回かすれば処方のオーダーを任されます。

どんな病気にどんな薬を使うのか、皆さんも医学部6年間でかなり勉強しているはずです。
しかし、学生の頃に勉強した薬の「物質名」だけ覚えていても現場では使えません。
なぜなら実際の医療現場では、薬剤は基本的に「商品名」で呼ばれており、しかも用量(○mg錠など)と日数も加味して処方をしているからです。
指導医がこだわりの強い内科医であれば、細かく内容を調整しながら毎日何回も処方をすることになります。

そういった処方業務は、今はPCのオーダー画面からクリック一つの少ない手間で処方ができます。
そのため病棟医は皆「前回の処方をコピペして、必要なら内容を修正」という手順で処方するようになり、そうすると避けられないのが医師のPC操作ミスが原因の誤処方です。

経験が浅く、しかも作業量が多い研修医はPC操作ミスでしばしば誤処方をしてしまいます。
そんなヒューマンエラーの防波堤になってくれているのが薬剤部にいる薬剤師さんです。
彼らは、院内全ての処方オーダーを受けて、病棟で使用する薬を用意してくれます。
病棟医が過去の処方と大きく違う薬を処方したり、用量や飲み方を変えた場合、
「○○さんの処方の確認ですが、今回は○○から○○に変更で良いのでしょうか?」と、処方確認の電話をしてくれます。

もちろん、医師側としては薬剤の種類や用量、日数の変更のほとんどを「あえてやっている」わけですが、万が一にも間違いが起こらないようにと薬剤師さんも「あえて念のための処方確認」の連絡をしてくれます。

実際、どんなに優秀な研修医でも、処方の入力ミスをすることはあります。
初期研修中に「危なかった。よくぞ気付いて連絡してくれた!」と自分のミスを防いでもらって感謝する日が何回も訪れます。

内科ローテ中に繰り返し薬剤師さんからの処方確認の電話を受けたからといって、「自分は正しいのに間違ったと思われている」と勘違いして、電話口で「それはわざとです。いいからその通りに出してください!」と横柄な態度をとってしまう研修医にはならないようにしてください。

処方確認の電話がかかってきたときは「いつも丁寧にチェックしてくれてありがたい」と薬剤師さんに感謝して、しっかり「処方内容を変更した理由」を説明しましょう。
しっかり情報共有ができれば、薬剤師さんから処方についてのアドバイスをもらえるかもしれません。

何回も話すようになれば相手の薬剤師さんの声を聞けば誰だかわかるようになります。
処方確認をきっかけに逆にこちらからも色々と質問して、薬剤師さんとの連携を深めていきましょう。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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