学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

14. はじめてのカンファレンス

入局後はいろいろな診療科のカンファレンスに参加する機会なんてありません。初期研修のローテート期間を活かして、カンファレンスで自分の臨床能力を貪欲に伸ばしていってください。

カンファレンスこそ研修医のスキルアップの場

カンファレンスは、どの科をローテしているときも必ず週間スケジュールのどこかに組み込まれている医局の定例行事の1つです。

カンファレンスの規模と参加者によって、いくつかのパターンがありますが、一番多く開催されるのは治療グループごとに治療方針を検討する「治療グループのカンファレンス(例:上部消化管カンファ、下部消化管カンファなど)」です。
医局によっては、発表者(当番制)が1つの症例を取り上げて文献の吟味も含めてディスカッションする症例検討会を時にカンファレンスということもありますが、今回は病棟で日常的に開催されている前述の治療グループ単位でのカンファレンスについてお話しします。

研修医にとって「カンファレンス=早く終わらないかなぁと思いながら待っているだけの時間」になりがちですが、その時間をボーっと座って過ごすか、集中して有効活用するかで、初期研修後に身に付く臨床センスに大きな差がつきます。
しかし、大体どこの医局でもカンファレンスでは上級医が中心になって治療方針を検討するので、雑務に疲れた研修医は自分の担当分が終わると部屋の後ろの方で居眠りしていたりします。でも本当は、ここからがカンファレンスの大切なところなのです。

内科でも外科でも、臨床医の実力は経験した症例数に比例します。教科書に書いてある診断基準を暗記する「演繹的な学習」より、同じ病気の患者さん10人を現場で診て学ぶ「帰納的な学習」の方が、確実に臨床医の身になります。

研修医にとってローテ中の1、2ヵ月で受け持つ症例数は数例¢スくて十数例ぐらいですが、カンファレンスを通じて他の病棟医の症例までをバーチャルで経験するかどうかで、同じ研修医でもスキルに雲泥の差がつきます。

ァ 入局後はいろいろな診療科のカンファレンスに参加する機会なんてありません。初期研修のローテート期間を活かして、カンファレンスで自分の臨床能力を貪欲に伸ばしていってください。

臨床のセンスを磨く絶好の機会! カンファレンスでの学び方4か条

  • step1ストーリーを意識して症例提示を聴こう
  • step2ディスカッションの重心を捉えよう
  • step3上級医のコメントに耳を澄ませよう
  • step4疑問を見つけて質問してみよう
 

ベッドサイドを急ぎ足で回りつつの回診プレゼン(記事へのリンクつき)とは違って、部屋の中(多くは病棟のカンファレンスルーム)で、データや画像を見ながら皆でじっくりと症例を検討していくのがカンファレンスです。
だいたい1症例5~10分程度の時間をかけて、担当医と上級医(グループ長など)、その他の病棟医たちでディスカッションを行います。研修医としても、毎日会っている指導医や距離の近い病棟医が相手ですので、教授相手とは違いリラックスして担当患者さん達のプレゼンをできるはずです。

ぜひ前の方の席に座って積極的な姿勢でカンファレンスに参加しましょう。

step1ストーリーを意識して症例提示を聴こう

カンファレンスを通じて臨床のセンスを効率良く磨くために、まずは毎症例ストーリーを意識して症例提示のプレゼンを聴きましょう。
症例のストーリーとは、「その患者さんがどのような経緯で発症し、どの医療機関を受診し、いかなる所見を元に診断され、どのような治療経過を経てきたのか」という臨床経過の流れです。

カンファレンスでは、病棟医が順々に自分の担当する患者をプレゼン(症例提示)していきます。
そのプレゼンを聴くのは、グループ長(時に診療科長や医局長)と同僚の病棟医です。
皆が経過を知っているような入院の長い症例などはプレゼンも省略気味になりますが、前回カンファレンス後に入院した患者さん等は担当医も丁寧にストーリーに沿ってプレゼンしてくれます。
皆さんは、特にそういった新しく入院した患者さんのプレゼンを集中して聴くようにしてください。

回診ほど時間を短縮しなくて良いカンファレンスのプレゼンでは、点ではなく線で捉えた臨床経過のストーリーを皆でシェアすることが重要です。
どこの医局でも、優秀な病棟医は聴衆がすんなりと症例のストーリーをイメージできるわかりやすいプレゼンをしてくれます。
ストーリーを意識することに慣れたら、わかりやすいプレゼンをする先生をお手本にして自分のプレゼンも見直しましょう。

point2ディスカッションの重心を捉えよう

担当医からの症例提示が終わると、だいたいグループ長などの上級医の先生が質問をして、治療を吟味・検討するディスカッションが始まります。

ディスカッションの主なポイントは、

  • 「現在の診断は正しいのか?」
  • 「重症度の評価と治療法の適応は妥当か?」
  • 「疾患特有の合併症や、治療による合併症・副作用は無いか?」
  • 「治療効果はどうか?」
  • 「特に社会背景的な問題は無いか?」
などですが、症例ごとにディスカッションの重心はさまざまです。

ストーリーを意識してしっかり症例提示を聴いた後なら、担当医と上級医のやり取りから「なるほど、こういう症例では◯◯について議論すべきなのか」と自ずと症例ごとに重心を捉えられるようになるはずです。
初期研修後に、鋭い着眼点を持つ若手として難しい症例も安心して任せられるか、ピントがずれた危うい若手として周りをヒヤヒヤさせるかは、臨床のバランス感覚の有無が大きく影響します。
症例提示を聴いている段階から「この症例では何に重心を置いて考えるべきか?」を頭にイメージしつつ、重心を捉えるバランス感覚を身につけてください。

point3上級医のコメントに耳を澄ませよう

ストーリーを意識すること、ディスカッションの重心を捉えることを基本編とするなら、上級医のコメントに耳を澄ませてその裏にある真意を探ろうとすることは応用編です。
皆さんはカンファレンスや回診中に、偉い先生がたまによくわからない(意図が不明の)質問をしているところを見たことはありませんか? 

その症例とは直接関係のなさそうな検査項目や所見などを「○○の数値はいくつだった?」とか「○○の検査はした?」などを短的に聞かれて疑問に思ったときのことを思い出してみてください。
バタバタしている回診時などでは「ん? 今の質問に何の意味があるんだろう?」と疑問に思いつつ、意図を理解せずに質問に答えて終わりにしてしまうパターンが少なくありません。

しかし、教授やグループ長をはじめとしたベテラン上級医の何気ない質問の中にこそ、実は深い臨床の極意が隠されていたりします。何故なら、説明が面倒だから言わないだけで、上級医の先生の頭の中には、多くの鑑別疾患や病態の推論アルゴリズムが複雑に渦巻いているからです。

カンファレンスは、回診と違って皆で机を囲んで議論する場です。もし上級医の先生の質問やコメントに「?」を感じたら、空気を読みつつキリの良いところでその意図を聞いてみましょう。
教育熱心な先生なら「こういう病態のときは、◯◯の値が上昇したりするんだよ」などと教科書に書いていない臨床のパールを丁寧に教えてくれるはずです。
もちろんメモをしておいて、後で自分の指導医に聞いても良いです。

カンファレンスでの上級医のコメントには、必ず何かしらの意図が含まれています。
質問の意図を意識して上級医のコメントに耳を澄ませていると、それまで見逃していた臨床推論の含まれた上級医の一言をうまく拾えるようになってきます。
何気ない一言に「?」を感じて、それらを丁寧に拾っていくことを習慣づけて行きましょう。

point4疑問を見つけて質問してみよう

最後の4つ目も応用編です。自分で疑問を見つけて質問をすることにチャレンジしてみましょう。
質問をすると言っても、なんでもかんでも無闇やたらに聞けばいいわけではありません。

特に「◯◯って何ですか?」と単に知らないことを聞くような質問は厳禁です。
「知らないならまずは自分で調べなさい」と怒られるのがオチです。
わざわざカンファレンスで先生たちの時間を割いて質問するからには、質問する意義のある質問をする必要があります。

たとえば、「この症例の場合、病態的には○○をきたしているかと思うのですが、治療法として○○などの適応はあるのでしょうか?」と自分の見解、推論を述べながら相手の意見を求める質問をしてみましょう。
研修医がそんな質問をしてきたら、上級医は「この研修医、よく考えてるなぁ」と嬉しくなって教育モードのスイッチが入ります。

カンファレンスで上級医をうならせる質問をするには、症例のストーリーを把握できていること、ディスカッションの重心を捉えていること、上級医のコメントを注意深く聞いておくことが必要となってきます。
Step1からStep4で学んだことを自分の考察を加えた質問にしてアウトプットしてみましょう。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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