学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

13. はじめての回診プレゼン

デキる研修医に求められるのは、スタンダードな症例をいかに簡潔にサマライズしてプレゼンテーション(プレゼン)できるかです。要点はきっちり押さえて、短い時間で上級医を感心させるプレゼンを目指しましょう。

簡潔かつ要点をまとめた症例提示がポイント

研修医として病棟で働くようになれば、毎日どこかでプレゼンの機会がやってきます。指導医に対する病棟プレゼン、メディカルスタッフへの治療方針の説明、他科の先生へのコンサルテーション、そしてベッドサイドでのグループ回診や教授回診などなど。

キャリアの浅い研修医同士では、手技などの技術は意外と差がつかないものですが、担当患者のプレゼン、特にベッドサイドなどでの短いプレゼンほど研修医の能力の差が如実に現れます。
医局員全員で病棟を回っていく教授(部長)回診では、上級医は研修医のプレゼンを聞きながら彼らの出来不出来を見極めています。
回診では、1〜2時間で何十人もの入院患者さんを診て回るわけですから、患者1人あたりにかけられる時間は症例提示、診察、質疑応答まで入れて1〜3分程度です。逆算すれば研修医は30秒〜1分程度に要点をまとめて症例提示(プレゼン)をしなければなりません。

もちろん単純に「短いプレゼン=デキる研修医」ではありません。難しい症例であれば、誰がプレゼンしても時間はかかります。

デキる研修医に求められるのは、スタンダードな症例をいかに簡潔にサマライズしてプレゼンできるかです。要点はきっちり押さえて、省略できる所はどんどん省いて、短い時間で上級医を感心させるプレゼンを目指しましょう。

4Stepでまとめよう! 主治医目線のデキる回診プレゼン

  • step1診断名
  • step2入院までの経緯
  • step3入院後経過と現在の状態
  • step4今後の治療方針
 

つい最近まで学生だった研修医がやってしまう赤点プレゼンの多くは「主治医目線のプレゼンができていない」ことが原因です。いわば学生目線でプレゼンをしてしまっている研修医が少なからずいます。

まだ素人である学生にとって、回診プレゼンは理解度をチェックするための現病歴や身体所見、病態に比重をおいたプレゼンテーションとなりますが、プロである主治医にとってそれらは前提知識であり、プレゼンの比重は「いかに治療するか」に移ります。

各診療科には同じ病名の患者さんが毎日入院してくるので、学生のように毎回入院時現症からプレゼンするのは愚の骨頂です。典型例であれば、それまでの経過はごくシンプルにまとめて(診断名と発症契機ぐらい)、治療の内容と効果(評価指標の経時的変化など)を中心に掘り下げるのが主治医目線のプレゼンです。

主治医目線すなわち治療を行う当事者としての目線で、治療に焦点を当ててサマライズした回診プレゼンを心がけてください。

step1診断名

【プレゼン例】
「○○さん、87歳。診断は誤嚥性肺炎、陳旧性脳梗塞、高血圧です。」

 

回診プレゼンの初めに、患者名、年齢に続けてまず言うべきことは「診断名」です。
温度版もしくはパソコン画面のカルテ(orサマリー)を提示しながら、該当患者の診断名を優先度の高い3つ程度(多くても4つ)に絞って簡潔に述べてください。
経過の長い症例ほど合併症も多くなりがちですが、たとえカルテに#1~#6で診断が挙げられていてもここで全てを口にするのは堪えてください。入院契機となったメイン病名を軸に優先順位をつけて絞り込みましょう。
回診プレゼンの冒頭は、何より簡潔明瞭であることが求められます。

皆さんのプレゼンを聞いている上級医達にとっては、まずはメイン病名を1つ挙げてくれさえすれば、それだけで大まかな臨床経過と病態をイメージできます。細かい合併症は必要であれば症例提示の後に補足すれば良いので、まずは割り切って診断名を絞り込みましょう。

point2入院までの経緯

【プレゼン例】
「以前より誤嚥性肺炎を繰り返していたPt.です。今回も7/10夕食後より咳が増強し、翌日7/11昼に38.7度の発熱を認めたため当院外来を受診されました。胸部レントゲンにて右下肺に浸潤影を認め、誤嚥性肺炎の診断で同日当科入院となりました。」

 

診断名に続けて、今回の入院までの経緯を10〜20秒程度にまとめて説明しましょう。

この「入院までの経緯」の部分は、学生時代のときに「現病歴」としてプレゼンしていた部分なので、学生気分が抜けてないとどうしても冗長になりがちです。教授も上級医達もその道何十年のエキスパートですから、Step1で診断名を聞いただけで、臨床経過の基本ストーリーがすでに頭の中に展開されています。

「入院までの経緯」に求められるポイントは、どんな症状で、いつ発症し、どのような所見から○○と診断され、○○(精査or治療)目的でいつ入院したのか、です。ポイントを押さえて可能な限り短くまとめましょう。

また、症例が典型的な経過であればあるほど情報は絞り、逆に非典型的な経過であればその部分をしっかり強調してプレゼンしてください。上記の【プレゼン例】は誤嚥性肺炎の典型例ですので、実はもっと簡潔にできます。

たとえば「以前より誤嚥性肺炎を繰り返していたPt.です。今回も誤嚥が契機と思われる肺炎を発症し、7/11当科入院となりました。」といった具合に思い切って省略してしまっても回診プレゼンでは問題ありません。

point3入院後経過と現在の状況

【プレゼン例】
「入院後、酸素投与(マスク○L/min)と抗生剤(○○○:薬剤名)点滴治療を開始しました。第6病日となる本日、酸素化はルームエアーでSpO2 97%まで回復し、炎症所見(体温、白血球、CRPなど)も改善しており、経過良好です。」

 

「入院までの経緯」の後は、「入院後経過と現在の状況」で治療と現状評価について説明します。

プレゼンを聞かせる相手に、入院後の治療経過が「良い」のか「悪い」のかがはっきり伝わるように説明しましょう。大切なのは、どんな治療をした結果、症状や検査所見は改善しているのかそれとも悪化しているのか、という点です。それらを明確にしてプレゼンしてください。

治療内容をあまり詳細に述べるのは釈迦に説法ですので基本控えるべきですが、難治症例や非典型例で何かしら治療を工夫した場合などはいつもの治療と違う点(治療法の選択やデバイスの設定など)について理由も含めて説明しておきましょう。

point4今後の治療方針

【プレゼン例】
「今後徐々に安静度をアップし、特に問題がなければ再来週の退院を予定しています。また今回3回目の誤嚥性肺炎ですが、これまで嚥下機能が未評価でした。そのため来週水曜に嚥下機能検査を行い、退院前にできるだけ嚥下リハビリとご家族も含めた摂食嚥下指導を行う予定です。退院後は近医往診クリニックにて在宅フォローアップをしていただく方針です。」

 

症例提示の最後を締めるのは、「今後の治療方針」です。

担当医として退院までのスケジュールや問題点に対する考察(治療の工夫)、退院後の方針(自院外来通院、転院、在宅介護など)について説明しましょう。

学生時代のプレゼンと大きく違うのは、主治医としての目線で「予定通り退院できそうか否か」にまず力点を置いてプレゼンをするという点です。

皆さんのプレゼンを聞いている周りの上級医達は、その症例の治療経過が順調かどうかを「想定された入院期間で無事退院できそうか否か」で概ね判断します。予定通り退院できそうなら治療が順調で状態も良いのだろうと安心して聞いていられるし、入院期間が延びそうなら何か問題(治療効果が芳しくないor感染・出血などを併発)が起きているのかな?と注意深く耳を澄ませます。

主治医として退院までの道筋、問題点に対するA/P、退院後の方針を整理して、堂々と今後の治療方針をプレゼンしましょう。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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