学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

12. はじめての当直

研修医になってはじめての当直は誰でも不安と緊張が大きいもの。 今回はそんな不安だらけの当直をどのように乗り越えるかを具体的に紹介します。

些細なことでも必ず上級医にコンサルトしよう!

研修医になりはじめての当直の日、「発熱? 点滴漏れ? 今夜、病棟からはどんなコールがかかってくるんだろう?」や「胸痛? 腹痛? 今日の救急外来にはどんな患者さんがやってくるんだろう?」など不安を抱える方がほとんどでしょう。人によっては本を何冊も買い込んで当直で使うかもしれない知識や技術の予習に余念のない研修医もいるでしょう。がしかし、当直上級医からの目線で言わせて貰えば、「研修医に技術も知識も期待していない」というのが本音です。だってまだ研修医なわけですから。知識も技術も不十分なのはそもそも当然です。それよりも研修医に求めるのは上級医へのホウレンソウ、すなわち些細なことでも必ず上級医にコンサルトして指示を仰ぐということです。研修医にいくらやる気があっても、自分の知らないところで勝手に暴走されてしまうのが上級医にとって一番困ります。

今の時代、夜中にコールしたというだけで研修医を怒るようなドクターは研修指定病院にまずいませんから、安心して上級医にコンサルトしてください。報告せずに自己判断で治療する、報告時に所見や数値をごまかす、自分で直接診ずに指示を出す、事後報告すらしない、などは絶対NGです。

急変などではない限り、まずは自分で患者さんを診て情報を整理し、問題点をアセスメントして自分の意見や治療プランを上級医にプレゼンしましょう。研修医なりに一生懸命考えた過程が見えれば、夜中にいくらコールされても上級医としては全く構いません。また上級医に「◯◯の数値は大丈夫?」などと聞かれて、まだ見ていないのに「はい、大丈夫です」と反射的にごまかすのも絶対NGです。
多くの上級医は後で自分でもチェックしに行きます。誠意のある正直なホウレンソウを心がけてください。 知識や技術を期待されていない研修医という立場は大きな武器です。数年経ったら嫌でも1人で判断しなければいけなくなるわけですから、聞けるうちは些細なことでも上級医にコンサルトしてできるだけ多くのことを吸収しておきましょう。

駆け出し研修医のための、当直を乗り越えるコツ4カ条

  • point1当直前に軽く腹ごしらえをしておこう
  • point2当直帯のスタッフにしっかり挨拶をしよう
  • point3早めに病棟で情報収集をしておこう
  • point4ちょっとした空き時間に仮眠をとろう
 

研修医がどんな環境で当直をすることになるかは研修病院によって様々ですが、当直の主な業務は

  • 「病棟の入院患者さんへの対応」
  • 「夜間の救急外来(救急搬送含む)」
の2つです。
どちらも研修医をファーストコールにする病院もあれば、病棟対応と救急外来のどちらかだけ担当させる病院もあります。病棟対応は上級医が担当して研修医は専ら救急外来のファーストコールというパターン、もしくはその逆パターンもあります。
医師の当直は他の業種と違って当直明けの日も通常業務というのがつらいところですが、開業しない限りは誰でも週1~3回ペースの当直業務を避けては通れません。しかし、研修医の中には当直のペース配分を誤ったり要領が悪かったりで大きく疲れを溜めこんでしまう人もいます。当直にまだ慣れていない研修医が体を壊さぬよう、精神的・体力的な負担を軽減してうまく当直を乗り越えるためのコツを4つご紹介します。

point1当直前に軽く腹ごしらえをしておこう

はじめての当直の前には、必ず当直帯に入る前の夕方に軽く腹ごしらえをしておきましょう。当直に慣れていない研修医にとっては、ある意味これが当直をする上で一番大切なことかもしれません。

 

研修医が当直をする際によくありがちで、しかも手痛いミスの1つが当直の仕事にかかりきりで夕食を食べるタイミングを逃してしまうことです。運悪く朝まで食事する余裕がなく働き続ける日もあります。特に「食事は各自で」となっている病院の場合は、上級医もいちいち研修医が食事をしたかどうかなんて確認しません。研修医だって当直の仕事中に「先生、夕食食べてきていいですか?」なんて空気の読めない発言はできないので、要領をつかめていない研修医が飲まず食わずで朝まで働き続けるということはたまにあります。
もちろん、毎回の当直が夕方から朝までノンストップで忙しいわけではないです。病院や診療科にもよりますが、朝までびっしり働き続ける当直に当たる確率は数回に1回以下でしょう。それでもはじめての当直でその1回に当たってしまうこともありますし、何事も備えあれば憂いなしです。その病院の当直に慣れるまでは、当直の日の夕方4、5時ぐらいにおにぎりか菓子パンで軽く腹ごしらえをして水分補給もしておきましょう。買いに行く暇も食べる暇もないという場合には、白衣のポケットに手軽な栄養補助食品などを忍ばせておくのも1つの手です。何が起こるかわからない当直の夜を万全の態勢で乗り切るために、食べられるときに食べておく習慣をつけるようにしましょう。

point2当直帯のスタッフにしっかり挨拶をしよう

その日の当直でお世話になる上級医、夜勤の看護師さんたちには、必ず最初に挨拶をしておきましょう。挨拶なんて当たり前のことのようですが、当直が始まる際の挨拶は意識しておかないと意外と忘れがちです。
研修医が当直する場合、当然その上には上級医の先生がいるわけですが、その先生が自分の直接のオーベン(指導医)とは限りません。むしろ普段あまり接点のない先生であることもよくあります。夕方4~5時ぐらいにタイミングを見計らって、当直でお世話になる上級医の先生をコールして挨拶しておきましょう。また病棟にいる夜勤の看護師さんたちにも「今日の当直で○○先生の下につく○○です。病棟で何かあったら遠慮なくコールしてください。よろしくお願いします!」と忘れずに挨拶をしておきましょう。

point3早めに病棟で情報収集をしておこう

当直の仕事が忙しくなる前に、早めに病棟の入院患者さんたちについて情報収集をしておきましょう。「当直の夜は何が起こるかわからない」とは言っても、院外からやってくる急患はともかく、院内の入院患者にその夜何が起こりそうかはある程度予測がつきます。外科系病棟であれば回診などで研修医もだいたいの情報を共有できているでしょうが、主治医制の内科系病棟だと研修医は自分の担当以外の患者についてはほとんど知る由もないのが実際のところです。

 

研修医といえども当直中は病棟内のどの患者さんも診ることになる可能性があります。もちろん病棟患者全員を完璧に把握している必要はありませんが、オペ当日の患者さんや、ターミナルで状態の悪い患者さんなど、その夜何か起こる可能性の高そうな患者さんについては、事前に主治医や担当看護師さんから情報を集めておきましょう。夕方、ナースステーションに残っている先生や看護師さんに「今日の当直で、気をつけて診ておいたほうが良い患者さんっています?」と聞いてみましょう。「ちょうど○○先生にも言ったんだけど実は○○さんの状態が…」とか「◯◯さん、電子カルテに急変時の対応について詳しく書いておいたから…」といった情報を早めに手に入れて、いざコールがかかってきたときに慌てなくて済むようにしておきましょう。

point4ちょっとした空き時間に仮眠をとろう

当直の仕事が一段落したら、すかさず仮眠をとるようにしましょう。特に夜の9時〜12時ぐらいに短時間でも仮眠をとれるかどうかは、当直に慣れない研修医の翌朝の体調に大きく影響します。
寝るには早い深夜前の時間帯に仕事が落ち着くと、当直医の多くはカルテやサマリーを書いたり、ナースステーションで雑談したり、本を読んで時間を潰します。しかし、そんな平穏な時間が朝まで続く保証はありません。深夜になってから救急車がやって来てそのまま朝までノンストップという夜も珍しくないわけです。最初のうちは救急外来や病棟の仕事が落ち着いたら、すかさず体を休めて体力を温存するようにしてください。横にならずともソファーに深く腰掛けて目を閉じてしばらく休んでいるだけで十分です。当直には忙しさの波があるので、いくらその時が暇でもどうせ朝までにはもうひと山ふた山あります。研修医のうちは、ウラ当直(各診療科の病棟メインの当直)でもオモテ当直(病院の内科当直として夜間の救急外来のファーストコール)でも、休めるタイミングを見計らって休むよう心がけてください。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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