学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

10. 研修病院の選び方(3) –専門診療編-

前回お話しした初期研修プログラムを重視した「ジェネラリスト型」の研修病院選びに続いて、今回は専門診療を重視した「スペシャリスト型」の研修病院選びについて考えていきましょう。

2年後のスペシャリスト予備軍を目指した初期研修とは?

研修病院選びをしている多くの医学生にとって、初期研修は「医師としての最初の2年間を使った基礎トレーニング期間」という認識が強いでしょう。しかし、実際に研修医として働き、ある程度時間が経過すると、残された初期研修の時間を使って、「いかに将来の専門科を見据えた準備」ができるのかを考えるようになります。初期研修を終える2年後に、自分の選択した診療科のスペシャリスト予備軍として良いスタートができるかどうかは、実は初期研修病院を選ぶところから始まっています。
今の時点で、将来の診療科を決めている人はもちろん、まだ専門科が絞りきれていない人も、病院の専門診療を担っている「医局」の情報をチェックしておきましょう。

医局から探そう! 専門診療重視の初期研修病院

  • check1サブスペシャリティ
  • check2指導体制
  • check3研究アクティビティ
 

「既に将来の専門科が決まっているので、早く専門診療のスキルアップを始めたい」という人には、医局(診療科)に焦点を当てた研修病院探しをオススメします。なぜなら、初期研修のローテ中に自分が志望する診療科の予習をしたいと思っても、研修病院にその専門診療をしっかりと学べる環境がなければどうしようもないからです。自分の志望する(興味のある)診療科が研修病院に存在していることは前提であり、将来の専門科を見据えて効果的な初期研修ができるかどうかはその診療科の「医局」次第です。
医局というと、学生の目線では診療スタッフの人柄や人数など「組織の雰囲気」に目が行きがちですが、大切なのは医局のサブスペシャリティ、指導体制、研究アクティビティです。専門診療を学ぶ場である医局についてしっかりと情報を収集しましょう。

check1サブスペシャリティ

  • ・サブスペシャリティとは?
  • ・診療科トップのサブスペシャリティは?
  • ・自分が興味を持っているサブスペシャリティは?

サブスペシャリティとは、診療科の下に連なる細分化された専門分野のことです。実は「○○科」と言う診療科単位で示される領域は広い意味での専門であって、実際には「○○科」の下には細分化された専門分野があります。その専門分野をサブスペシャリティと呼び、たとえば循環器内科なら虚血性心疾患、不整脈、心不全、消化器内科なら上部消化管、下部消化管、肝胆膵などといくつもの専門分野に分けられます。

 

診療科トップのサブスペシャリティとは、診療科の長である教授もしくは部長の専門分野のことです。研修病院における診療科のトップとなるような先生の多くは自分のサブスペシャリティにおいて国内屈指のスペシャリストであり、トップのサブスペシャリティ=その医局が得意とするサブスペシャリティとなります。そして、必然的にその医局全体が研究・臨床ともに高いレベルへと導かれることになります。診療科トップの先生のサブスペシャリティを知るには、その先生の名前で検索して医局ホームページやメディア取材、講演内容をチェックするとよいでしょう。気になる先生がいれば積極的に学会の講演を聴きに行くのもオススメです。

 

皆さんには、今の時点で興味を持っているサブスペシャリティはあるでしょうか? 自分の選んだ診療科の専門診療を究めていくプロセスの中で、「○○科専門医」の資格取得はあくまで通過点です。基礎〜臨床を通じて高い専門性を持つスペシャリストとなるためには、自分のサブスペシャリティにおいて臨床・研究業績を積み上げていく必要があります。自分がその診療科のどのサブスペシャリティに興味を持っているのかを意識して、研修病院の情報収集を始めましょう。

check2指導体制

  • ・専門スキルのトレーニングは?
  • ・若手向け勉強会は?

専門診療におけるスキルアップを目指す上で重要なのが医局の指導体制です。研修医や新入局員などの若手に対して、どのような指導体制をとっているかは医局ごとに千差万別です。「若手を指導する熱意があるかどうか」を見極めるため、皆さんに優先してチェックしてほしいポイントは、専門スキルのトレーニングと若手向け勉強会です。
専門スキルのトレーニングは、本来入局員(3年目以降)を対象とした各診療科特有の検査・治療スキル(心カテや内視鏡など)のトレーニングです。トレーニング形式としては、オーベンから随時指導されたり、診療グループに配属(ベッドフリー、検査室付き)されたり、数多く経験できる関連病院に派遣されたり、などがあります。どの病院でも原則ローテーション1周目の初期研修医は対象外ですが、医局によっては研修医のレベル次第で初期研修のうちから専門スキルのトレーニングをさせてくれる医局もあります。多くはケースバイケースで、ローテーション2周目(選択期間でのローテ)の研修医を対象にオーベンの裁量(コイツは大丈夫と判断した時)でトレーニングを積ませてくれます。研修医に専門スキルのトレーニングをさせてくれる医局を長期間ローテーションすれば、皆さんが初期研修を終える2年後にはいっぱしのスペシャリスト予備軍になっていることもありえます。病院見学時に、そういった前例があるかどうかを研修医やオーベンの先生にそれとなく聞いてみましょう。

 

若手向け勉強会も、元々は入局員を対象に開催されている勉強会(クルズス、レクチャー、セミナー等と呼ぶ場合もある)がほとんどです。しかし、専門スキルのトレーニングとは違い、熱意さえあれば研修医1年目も2年目も参加できます。勉強会を担当する講師の手間もかかるので、その医局が「若手教育にどれだけ熱心か」で開催頻度には大きく差がありますが、新入局員の入ってくる4月から6月にかけては基本的に多く開催されています。病院見学を申し込む際に、開催の有無と開催スケジュールを確認して、可能なら学生のうちから参加させてもらいましょう。

 

「組織全体で若手を積極的に育てる文化」がある可能性大の若手向け勉強会
1. 講師が若手
2. スライドor資料がしっかりしている
3. 内容が実務に直結
4. 質問or議論が活発
5. 開催頻度が高い

 

病院見学を中心に、専門スキルのトレーニングと若手向け勉強会の情報を集めて、専門診療のレベル上げに最適な医局を見つけてください。

check3研究アクティビティ

  • ・自分のやりたい研究は臨床寄り? 基礎寄り?
  • ・気になる医局の研究アクティビティは?

 

スペシャリストとして研鑽を積む上で、医学研究は避けては通れません。たまに「自分は研究には興味がない」という学生さんがいますが、今の時代、専門医が医学研究を全く経験しないで終わることはまずなく、臨床研究でも基礎研究でも何かしらの医学研究を行うことになるでしょう。研究活動に本格的に携わるのは早くても初期研修が終わってからですが、どうせやるなら自分は臨床研究寄り(臨床バイオマーカーなどの統計学的解析中心)か基礎研究寄り(細胞・動物実験中心)かということを初期研修前に考えておくと、将来専門診療に進んだ時に活きてきます。

 

研修病院探しを通じて、自分の興味のあるサブスペシャリティを強みとしている診療科医局が見つかったら、その医局のホームページを開いてみましょう。「研究紹介」といったページに、写真やグラフ付きで研究内容が説明されていたり、業績リストなどが掲載されていたりするはずです。その医局の研究は、臨床研究寄りでしょうか? それとも基礎研究寄りでしょうか? 医局の得意とするサブスペシャリティが自分の興味のある分野だったとしても、研究が臨床寄りか基礎寄りかで、自分が将来専門家として掘り下げていく部分が大きく変わってきます。
基本的に市中病院の医局はほぼ臨床研究で、大学病院の医局は臨床研究と基礎研究が混在しています。ですので割り切って言えば、将来、細胞・動物実験などの基礎研究をやりたい人はキャリアのどこかで大学病院の医局に所属する必要があり、細胞・動物実験にさえ興味がなければ市中病院一筋のキャリアでも全く困りません。もちろん、初期研修後に大学病院、市中病院どちらの医局を選んでも、熱意さえあればいくらでもやり直しはできます。

 

学生の時点でそこまで深刻に考える必要はありませんが、自分が将来どのサブスペシャリティでどんな研究をしたいのかもできるだけ考えて研修病院を選んでおくと、将来の専門に直結する充実した初期研修が期待できます。 また、5年後10年後の研究キャリアを学生のうちから考えている人は、PubMedで診療科トップの名前をauthor検索して研究のアウトプットである論文にも目を通しておくと良いでしょう。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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