学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

9. 研修病院の選び方(2) –初期研修プログラム編-

医者として効率的にレベルアップをしていくためには自分に合った研修病院を選ぶことが重要です。 研修病院選びのポイントとしては、初期研修プログラムをチェックしていく必要がありますよね。 今回は、そんな初期研修プログラムの見極め方を紹介していきます。

最初の2年間でどのようなレベル上げをするか、そのための初期研修病院

初期臨床研修は医師として最初の2年間を使ったレベルアップ期間です。ゲームで言えば研修医1年目の4月というのは、職業:初期研修医、レベル1、スキル:なし、からのスタートになります。学生時代の成績は少しの知識の差でしかなく、医療の実務に関するスキルは全員横並びの状態から、2年間でどのように自分のレベル上げをしていくかが初期研修のテーマなのです。

レベルアップの方向性 「2年後はジェネラリスト? スペシャリスト?」

どんな研修病院に行っても自分が努力をしなければ成長しないし、逆に人一倍頑張れば病院に関係なく有能な医師になれる。というのもあながち間違いではないのですが、せっかくなら自分に合った研修病院を選んで将来に活きる効率的にレベルアップをしたいものです。
元々、初期研修の2年間で得られる経験値には限度があります。その経験値を使ってどのように自分のレベルを上げたいかを決めて研修病院を選ぶ必要があると考えます。
初期研修を活かしたレベルアップの方向性は大きく2通りです。

 

1つはジェネラリスト型、もう1つはスペシャリスト型です。
ジェネラリスト型は、内科、外科、救急、小児科、産婦人科などを幅広くローテーションして基本的な臨床スキルをバランス良く伸ばしていく研修スタイルです。
スペシャリスト型は、自分の将来進みたい専門科を中心に、その他のローテーションは最小限に留めて、専門診療に特化した最短距離でのスキルアップを目指す研修スタイルです。
一般的に、初期研修で有名な市中病院の多くは、ジェネラリスト型の研修医育成を得意としており、それぞれ歴史と実績のある独自の初期研修プログラムを売りにしています。
一方、大学病院などは基礎研究から臨床までをつなげた専門診療を武器としており、ある診療科を長くローテすればするほど狭く深いスペシャリスト型の成長が可能です。

 

2年間の初期研修で、ジェネラリスト寄りのレベルアップをしたいなら「初期研修プログラム」を、スペシャリスト寄りのレベルアップをしたいなら「専門診療」を重視して情報収集(見学含む)を始め、自分のレベルアップに最適な研修病院を見つけましょう。

ジェネラリスト寄りレベルアップを目指す初期研修プログラムの見極め方

  • check1入職時オリエンテーション
  • check2スキルアップ(手技、当直、外来)
  • check3学習機会(回診、カンファレンス、勉強会)
 

初期研修の2年間を使ったジェネラリスト寄りのレベルアップには、専門外のことにも精通したスーパードクターを目指す人、将来どの専門科に進んでも困らないだけの高い基礎力を身につけたい人などが向いており、初期研修プログラムを重視した研修病院選びがオススメです。
初期研修プログラムにこだわって研修病院を選んだ際のメリットは、2年後には医師としてバランスの良い成長が見込めるということです。逆に言えば、わずか2年間で自分をより成長させてくれる研修病院を選ばねばなりません。その初期研修プログラムが自分にとって価値のある2年間となるかどうかを見極めるため、入職時オリエンテーション、スキルアップ、学習機会の3つの面を比較していきましょう。

check1入職時オリエンテーション

  • ・入職時オリエンテーションの期間は?
  • ・オリエンテーション内容の充実度(カリキュラム、シミュレーション)は?
  • ・臨床研修センターの体制は?

病院側が研修医をどれだけ大切にしようとしているか、それを端的に見ることができるのが入職時オリエンテーションです。研修医1年目の4月というのは、学生時代の成績に関係なく誰もが実務レベル1です。昔、臨床研修が義務化されてすぐの頃は4月初旬に配属された後は現場の指導医任せ、慣れない環境で初日から四苦八苦する研修医という研修風景もありましたが、今では多くの研修病院が「大切な研修医に不要なストレスを与えず良い環境で働いてもらう」ために、入職時オリエンテーションという診療科配属前の研修を行うようになりました。
病院が研修医を現場で働かせる前の準備にしっかり取り組んでくれているかをチェックするために、見学の際には入職時オリエンテーションの期間と内容についてよく聞いて比較してください。
期間は、長ければよいわけではありませんが、最低3日はほしいところです。2週間も期間をとってくれる病院なら「研修医を大切にしている」と言えるでしょう。

 

内容に関しては、期間中に行われる基本業務のセミナー(病棟処置、電子カルテ、オーダリング)や接遇研修(身だしなみ、言葉遣い、トラブル対応)などのカリキュラム(時間割)を見せてくれるようお願いしましょう。おおまかな時間割しかないところもあれば、研修医業務を網羅した綿密なカリキュラムを組み、手技のシミュレーション研修を行う病院もあります。 また皆さんが所属することになる臨床研修センターの体制についてもよく観察しておきましょう。臨床研修センター長は大抵兼任で、ある診療科の教授or部長クラスの先生が担当しています。その下には、研修医達の面倒を見てくれる事務員の方がいます。皆さんが病院見学に行く際には、センター長か事務員の方が窓口となり対応してくれますので、彼らにどんどん質問をぶつけてみてください。先輩研修医たちの具体例などを出しながらスラスラと詳しい答えが返ってくるようなら、その病院は「当たり」です。形だけ名前だけの研修センターではなく、研修医一人ひとりの働きぶりや悩みをしっかり把握しケアする体制が整っているかをチェックしてください。

step2スキルアップ(手技、当直、外来)

  • ・経験できる手技の種類、件数は?
  • ・当直業務の回数、業務内容は?
  • ・新患外来をどこまで研修医に任せているか?

バランス良くレベルアップをするために、2年間でどのようなスキルアップを図る必要があるのでしょうか? 初期研修で身につけるべき基礎スキルは、手技、当直、外来の3つです。この3つをしっかり身につけていれば、3年目以降どの診療科に進んでも「仕事がデキる若手」としての活躍が期待できるはずです。

 

まず手技スキルですが、末梢点滴キープ、IVH、挿管、縫合など診療科を問わない基本手技を重点的に磨くため、初期研修中に経験できる基本手技の件数を研修センターの方に教えてもらいましょう(内視鏡や心カテなどの専門科特有のスキルは入局した後からで十分)。「各研修医次第で経験数は様々」なんて答えが返ってきたら黄色信号です。熱心な研修病院では、各研修医の基本手技の経験数を把握し経験数が足りない研修医には優先して機会を与えるところもあります。経験する機会は人それぞれ、運もありますが、病院側として研修医をしっかり育てようとする姿勢があるのかを探ってください。

 

次は当直スキルです。月の当直回数と業務内容を確認してください。
回数は、だいたい月4〜6回程度が適当です。というのも多ければ多いほど経験値がたまるわけではありません。寝当直は何回こなしても経験値ほぼゼロです。当直での研修医の主な業務は、病棟からのコール対応と夜間外来の対応です。診療科ごとに縦割りの各科当直体制のところだと、上級医によっては研修医を呼ばずに対処してしまうこともあります。「まずは研修医にやらせる」という度量がある当直体制かどうかをチェックしてください。また当直翌日の勤務についても確認しておきましょう。病院によっては半日勤務として早い帰宅を認めている(推奨している)ところもあります。

 

最後は外来スキルです。実は医師としての総合力を最も効率良く磨ける場が新患外来です。患者を一から診察し、診断をつけ、治療するという一連のプロセスを自分の力で完結することで得られる経験値は膨大です。昔から夜間の救急外来などは研修医のトレーニングの場として認知されていました。チェックするべきは夜間の救急外来や日中の新患外来で、研修医にどの程度の裁量を与えているかです。研修医ノータッチ、問診・診察のみ、検査・診断と治療プランの提案まで、病院によって研修医に与える裁量は様々です。研修医に外来をやらせない病院が悪い病院というわけではありません。患者を大切にすればするほど、未熟な研修医に初期対応を任せることが難しくなります。上級医のバックアップ体制など病院のマンパワーを割いてまで、外来を研修医教育の場としている病院は、間違いなく良い研修病院といえるでしょう。

check3学習機会(回診、カンファレンス、勉強会)

  • ・回診プレゼンに対する上級医のフィードバックは?
  • ・カンファレンスの頻度、ディスカッションの盛り上がり
  • ・勉強会のスケジュール、体制、講師

 

初期研修プログラム吟味の最後のチェックポイントは学習機会です。上述のスキルアップが「腕」を磨く場なら、回診やカンファレンス、勉強会などの学習機会を通じて磨くのは「頭」です。初期研修後に真にデキる研修医となるため、日々の学習機会を貪欲に活用しましょう。
研修医の学習機会として、もっとも効率的で頻度が多いのが回診です。オーベンとの朝・夕回診、グループの先生たちとのグループ回診、スタッフ全員で回る教授もしくは部長回診など、ほぼ毎日のように研修医は回診で担当患者さんのプレゼンをすることになります。研修病院に見学に行った際には、研修医のプレゼンに対して上級医(オーベンや教授)がどのような返しをするかよく観察しておきましょう。回診は大切な教育の場です。研修医のプレゼンが誤っていれば指摘し、足りないところは補足し、さらに臨床の要点や最新知見などをプラスアルファで教えてくれる、そんなフィードバックの光景がよく見られる病院は研修医を皆で教育するという精神が浸透していると言えます。

 

カンファレンスは、病室をめぐる回診とは違って、会議室の中で個々の症例を深く検討しディスカッションを行う場です。院内カンファレンスはいくつもあります。診療科ごとに週1回以上は何かしらのカンファレンスが開催されていますので、できれば見学日を合わせて参加してみましょう。カンファレンスでは、略語も多く飛び交いますので内容を正確に理解することは難しいかもしれませんが、大切なのはディスカッションが盛り上がっているかどうかです。カンファレンスに出す症例は、多くの人の意見をぶつけて治療方針を検討する必要のある難しい症例のです。勢いのある医局や病院のカンファレンスは、皆が活発に意見を出し合い熱い議論が繰り広げられます。無言の時間が長く冷めている場合は黄色信号です。カンファレンスの温度感をよく観察してください。
院内で定期的に開催されている勉強会は、多くて週1回、少なければ月1回以下と頻度が限られますが、あるテーマについて系統だった知識の習得ができる貴重な機会です。院内もしくは院外の先生が講師となって講演をしてくれます。研修病院によっては「研修医向けセミナー」として年間スケジュールを組んでいます。見学の時に臨床研修センターの事務さんに「研修医が参加できる院内勉強会はありますか?」と聞いてみましょう。勉強会のスケジュール、タイトル、講師などの資料がすぐに出てくるような研修病院は研修医教育にかなり力を入れていると言えますので、マッチング上位候補にリストアップしておきましょう。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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