学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

7. はじめての退院業務

退院業務は、担当患者さんが退院する際に主治医がやるべき退院前の準備です。入院治療が一段落し退院が近づいてきた患者さんに対して、研修医としてどのように退院の準備をしていくべきか、退院業務の流れをお話しします。

退院業務って?

退院業務は、担当患者さんの退院が近づいてきたら、主治医が迅速に取り組むべき退院の準備業務です。患者さんは、いくら治療が順調に進んで状態が良くなったからといっても、自動的に退院となるわけではありません。担当医が「治療が終わって、合併症もなく状態も安定している。退院しても大丈夫だな」と判断し、一連の退院業務を行うことで退院という1つのゴールを達成します。 せっかく治療が終わっているのに無駄に入院期間を長引かせていると、その間に院内感染症にかかったり、廃用によってADLが低下したり、いらぬ合併症を引き起こし退院の機を逃しかねません。優秀な病棟医ほど、担当患者さんの状態をしっかり見極め、良い状態で早く退院させようと迅速に退院業務を行います。

今回は、担当患者さんの初めての退院を想定して、実際の退院業務の流れを説明していきましょう。

教科書に書かれていない退院業務の流れ

  • step1退院日の決定
  • step2退院指示
  • step3退院時サマリーの作成
  • step4紹介状の作成
  • step5退院時の病状説明

退院日を決めるところから、患者さんとご家族への病状説明まで、退院業務の一連の流れを5つのステップに分けて説明します。こちらで説明する退院業務の流れは、ある程度経過の長い入院患者さんを想定しています。検査入院などの短期間入院であれば、病院ごとに「クリニカルパス」という退院までのスケジュール表が用意されていることが多いので、そちらを参考にしましょう。

step1退院日の決定

退院業務として、最初にやらなければいけないことは退院日を決めることです。といっても、実際に決めるのは指導医の先生になります。皆さんは、指導医の先生から担当患者さんの退院を伝えられて、退院日がいつになったかを知ることになります。もっとも、「◯◯さん、退院は明日になったからよろしくね」なんて急に言われることはないので安心してください。回診や病棟業務など指導医との日々のコミュニケーションの中で、「◯◯さん、だいぶ良くなってきたねぇ。そろそろ退院を考えてもいいかもね」というように、自然に退院の気配を感じることになるはずです。

指導医が「よし、◯◯さんの退院は来週月曜か火曜あたりにしよう」と具体的な退院日を決めようとした時、皆さんはできるだけ患者さん側の都合も聞いた上で退院日を調整するよう動いてあげてください。退院の際には、お迎えに来てくれるご家族の協力が欠かせません。しかし、こちらが何も言わず指定した日が実はご家族の都合があわなくて、家族のキーパーソンが来院できないということもありえます。患者さんやご家族の希望だけで、退院日を大幅に調整することはできませんが、前後1日ぐらいは患者さん側の都合を聞いて退院日を調整してあげましょう。
具体的には、指導医の先生に「では、来週の月曜か火曜あたりで、念のためご家族の都合を確認してから退院日を決めても良いですか?」と言って、患者さんのご家族に配慮して退院日を決めてください。

step2退院指示

退院日が決まったら、電子カルテを開いて退院に関する一連の指示を入力しましょう。患者さんのカルテ画面から行う入力操作は、
「退院」、「外来予約」、「退院処方」
の3つです(電子カルテによって若干名称が変わります)。

 

初めて退院指示を出すときは、「今から退院指示を出そうと思うのですが、初めてなのでオーダー画面を一緒に見ていただいても良いですか?」と指導医にお願いして、一緒に画面を見ながら指示出しするようにしましょう。

 

まず「退院」では、退院日の日時を入力します。家族のお迎えが午後になる場合は、昼食も「有り」になりますので、退院時刻にも気をつけて入力してください。
次に「外来予約」で退院後の最初の外来受診を予約します。多くの場合、退院から約2週間後の指導医もしくは元の外来主治医が受け持つ外来を予約することになりますが、受診時の検査項目(採血、尿、レントゲンなど)も含めてしっかり指導医に確認して入力しましょう。
3つ目の「退院処方」は、退院時に患者さんが持って帰る内服薬・外用薬のことです。内容を指導医に確認した上で、外来受診日までの日数分を処方しましょう。毎年4月はこの退院処方をうっかり忘れてしまい退院日に怒られる研修医が必ずいますので、1人で退院指示を入力するようになったら皆さんも気をつけて下さい。

step3退院時サマリーの作成

退院指示を出し終わったら、退院日までに退院時サマリーを仕上げてしまいましょう。退院時サマリーは別名入院サマリーとも言います(入院時サマリーとは別)。退院日が決まり退院指示を出した段階で、退院時サマリーを書く情報は十分集まっているはずですので、電子カルテのフォーマットを開いて退院時サマリーの作成にとりかかりましょう。

退院時サマリーの形式は、電子カルテによって多少違いますが、現病歴や既往歴など、入院時サマリーからコピー&ペーストできる部分は沢山ありますし、入院経過中にカルテをサマリー化(「はじめてのカルテ作成」参照)して経過をまとめておけば、退院時サマリーを書くのがグッと楽になります。 日々のちょっとした空き時間を有効活用して、退院日までにサマリーを仕上げましょう。

step4紹介状の作成

紹介状作成は、必ずしも全ての退院患者さんに当てはまるものではありません。今回の入院に先立って、他院からの紹介があった場合や、退院後から他院の外来通院を予定している場合には、退院までに紹介状を作成しなければなりません。退院当日になってから実は紹介状が必要だったと気付いては確実にアウトですので、一見紹介状が必要なさそうでも指導医の先生に「今度退院する◯◯さん、特に紹介状は必要ないですよね?」と毎回確認する癖をつけておきましょう。

具体的な紹介状の作成手順は、本連載第6回の「はじめての紹介状作成」で詳しく解説していますので、そちらを参考に退院前日までにしっかり紹介状を仕上げましょう。

step5退院時の病状説明

退院業務の最後は、退院時の病状説明です。この病状説明では、主治医から患者およびその家族に対して、入院中の治療経過を総括して説明します。病状説明という言い方以外にも、インフォームドコンセント(I.C.)やムンテラと言ったりもします。病状説明は基本的に指導医が検査データや画像を見せながら行いますので、研修医の役割は書記としてその説明内容をメモにまとめておき後でカルテに書き直しておくことです。病院によっては病状説明用に所定の用紙があるので、それに書いて後でスキャナ取込してもらうのも良いでしょう(スキャナは病棟クラークさんにお願いしましょう)。

 

退院時の病状説明はご家族も一緒に聞いてもらうことが大切です。そのため退院時の病状説明のほとんどは退院日にご家族が迎えに来た際に行います。事前に指導医には「◯◯さんの退院時の病状説明は、退院日にご家族が来院した際で大丈夫ですか?」と確認しておきましょう。また退院時の病状説明は、プライバシーに配慮した部屋を用意して行うことが一般的です(悪性腫瘍などの場合は特に)。ローテート中の診療科の病棟ごとに、「病状説明に使うのはこの部屋」という部屋があり、その多くはカンファレンスルームです。病棟のカンファレンスルームには大体「使用予約表」がありますので、病状説明を予定している時刻に自分の名前を記入して部屋をキープしておきましょう。

 

病状説明の後も看護師さんからの説明や会計の手続きなどがありますが、担当医としては病状説明を終えた時が患者さんを見送る場面になります。指導医の病状説明が終わったら、皆さんは出口のドアを開けて、部屋を出る患者さんとご家族をお見送りしましょう。多くの患者さんは退院後も通院治療がありますし、いずれ再入院される方も少なくありませんが、今回の退院は長い治療過程の1つの中間ゴールでありそれを無事達成できたことは大変喜ばしいことです。「ご退院おめでとうございます」と退院を祝福する言葉とともに、患者さんとご家族を笑顔で見送ってください。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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