学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

5. はじめての夕回診

夕回診で皆さんに特に注意してほしいのは、回診が終わった後の当直帯のスタッフとのコミュニケーションです。夕回診では回診そのものより回診後が大切です。今回は他の医療スタッフとの関わり方、特に研修医が忘れてしまいがちな周囲への気遣いに焦点を当ててお話しします。

夕回診って?

夕回診は、朝回診と対となるデイリー回診です。朝回診と同じように、指導医やグループの先生たちと一緒に病棟をラウンドしていきます。その日の仕事がひと段落した頃合いを見計らって、夕方5時、6時ぐらいに誰からともなく「そろそろラウンド(回診)行きます?」と声がかかって夕回診は始まります。 回診前に情報収集が必要だった朝回診と比べて、夕回診では特に事前準備の必要はないので安心してください。朝回診と同じように、積極的に前に出て患者さんや上の先生たちとコミュニケーションをとっていきましょう。

夕回診は、「病棟医が1日の仕事を終えて病棟を去る前に患者さんの状態を確認する」ための回診です。担当患者さんたちを診て、指導医が処方や点滴、治療食、処置など指示の追加or変更を判断します。ベッドサイドや廊下で指導医から「◯◯の追加オーダーしといて」と言われたら、忘れないようにメモを取っておきましょう。

気遣いを行動で示そう! 夕回診後のコミュニケーション

  • check1追加指示のお願い「遅い時間にごめんなさい!」
  • check2当直医・夜勤ナースへの申し送り「もしかしたら◯◯さんが…」
  • check3病棟スタッフのサポート「何か手伝えることありますか?」

夕回診が終わり、指導医が「それじゃ今日はそろそろ上がりにしようか? ◯◯君も残りの指示出してカルテ書いたら帰っていいからね。お疲れ様!」と言って医局に帰った後、皆さんはナースステーションで指示の追加or変更をすることになります。
夕回診の後、皆さんが残りの作業(指示とカルテ)をするためにパソコン前に座るのはきっと午後6時以降になるでしょう。いつも夜遅くまで残っている研修医にとっては「まだ6時」の感覚ですが、日勤のコメディカル職スタッフにとっては「もう6時」です。院内は当直体制に入りかけています。オーダリング画面の向こうにはオーダー(指示)を処理する“人”がいるということに配慮して指示を出していきましょう。

 

今の研修医にとって不運なのは、最初から全てのオーダリングが電子化されているということです。クリックだけで簡単に指示を出せてしまうと全てが自動化されたシステムのように勘違いしかねません。画面の向こうには、実際に手を動かして作業してくれる院内スタッフがいることを忘れないでください。

check1追加指示のお願い「遅い時間にごめんなさい!」

夕回診で出される指示の多くは処方や点滴、治療食に関するものです。指導医から言われた指示を全部そのままオーダリング入力する前に、一度「この指示、本当に今出す必要があるのかな?」と考えてみましょう。至急の指示もあれば、明日でも間に合う指示もあるはずです。
皆さんが夕方にそれらの指示を入力した場合、指示を処理してくれるのは夜勤ナースや薬剤部、栄養部、検査部の方々です。もし院内の医師たちが何も考えずに夕方にまとめて大量の指示を出したら、当直帯のただでさえ少ないスタッフたちがパンクしてしまいます。

皆さんが止むを得ず夕方に追加指示を出すときには、病棟なら担当の夜勤ナースを探して、薬剤部、栄養部、検査部などには電話で、皆さんの口から事情を説明してお願いしてください。「遅い時間にすみません。お手数ですが◯◯をお願いできますでしょうか?」とお願いして、「助かりました。ありがとうございます!」とお礼も忘れずに、相手への気遣いと感謝を示しましょう。

check 2当直医・夜勤ナースへの申し送り「もしかしたら◯◯さんが…」

自分の担当患者さんに状態の悪い人(呼吸循環が不安定、出血、敗血症)が居た場合、忘れてはいけないのが病棟の当直スタッフへの申し送りです。皆さんの担当患者が夜中に急変した時に対応してくれる当直医の先生と夜勤のナースさん達に、現在の状況と夜間に起こりうる出来事を伝えておきましょう。

「そのときカルテを読めばわかるはず」とか「この患者さんは長い経過だから言わなくても皆知っているはず」と申し送りを省略してしまうのはご法度です。「当直医や夜勤ナースの負担を少しでも減らすために、自分にわかる範囲で現状を伝えておこう」と当直スタッフへの気遣いを申し送りという行動で示してください。

夕回診で、皆さんが少しでも「もしかしたら◯◯さん今夜何かあるかも…」と感じた患者さんがいたら、急変時対応(心肺蘇生をすべきか否か)も含めて当直医や夜勤ナースに、「こういう状況の患者さんがいます」としっかり報告しておきましょう。その夜何も起きなくても、翌朝彼らは当直帯に気がついたことを皆さんに機嫌よくフィードバックしてくれるでしょう。

check3病棟スタッフのサポート「何か手伝えることありますか?」

夕回診後、追加指示やカルテ記載が終わって落ち着いたら、病棟を少し見回ってみましょう。病室や処置室を覗いて、慌ただしく動いているドクターやナースがいないか、観察しながら病棟をぐるりと一周回ってきてください。もしバタバタと廊下をダッシュしている人を見つけたら、どこかの病室で急変があった可能性大です。後を追いかけて、「私に何かできることありますか?」とヘルプに入りましょう。

 

急変などのイベントがなくても、病棟内を見て回っていれば何人もの病棟医や研修医を見かけるでしょう。ナースステーションでパソコン前に座っている人、処置室で何か準備中の人、検査機器を押して病室に向かっている人。自分の同期の研修医も含めて、忙しそうな医師を見かけたら積極的に「何か手伝えることありますか?」と声をかけましょう。困ったときはお互い様です。皆さんがいくら優秀だったとしても、自分だけで仕事が回らない状況は必ずやってきます。日頃から「病棟の他の皆は大丈夫かな?」と、誰かのために動ける準備をしておきましょう。

 

皆さんが「指示してくれれば手伝ったのに」と思っていても、声に出さなければ指導医を始め周りの病棟スタッフからは消極的→やる気のない研修医と思われてしまいます。皆さんが手伝いを申し出ても、研修医に何かやっかいなことを頼む人はまずいないので安心してください。「何かあったら遠慮なく言ってください」という気持ちで、積極的に声をかけていきましょう。

夕回診後が狙い時! はじめての病棟エコー

夕回診後、指示出しやカルテ記載が終われば、後は帰っても医局で同期と雑談しても自由です。

 

え? まだまだ勉強し足りない?(笑)
そんなやる気に溢れる研修医は、病棟でエコーの機械を押して歩いている先生がいないか探しましょう。
病棟でエコーを使う理由はだいたい決まっています。心臓や腹部などの臓器をエコーで評価するためか、胸腔穿刺か腹腔穿刺のガイドのためか、どちらかです。さすがに毎日とまでいかなくても、夕方の落ち着いた時間帯にベッドサイドにエコーを撮りに行く病棟医を皆さんはよく見かけるはずです。
エコーを押している先生を見かけたら、「◯◯先生、今からエコーですか?」と声をかけてみましょう。気の良い先生なら「うん、今から◯◯(病名)の患者さんのエコーを撮りに行くんだけど一緒に行く?」と病室に連れて行ってくれるはずです。病室に着いたら患者さんの体位変換を積極的に手伝って、自分のやる気をアピールしましょう。きっと先生はエコーを撮りつつ、たまに画面を指していろいろ教えてくれるはずです。時間に余裕があればエコーのプローブを持たせて撮り方まで教えてくれるかもしれません。

 

エコーの基本的な撮り方を教わったら、今度は自分の担当患者さんにもベッドサイドでエコーを撮らせてもらいましょう。心エコーと腹部エコーをある程度身に付けておけば、救急外来や当直の大きな武器になります。最初はうまく描出できず時間もかかるでしょうが、エコーは非侵襲の検査ですのでどんどん数をこなしてスキルアップを図ってください。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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