学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

4. はじめての朝回診

院内には回診の名の付くイベントはいくつもありますが、週1回ペースの教授回診(or部長回診)、そして毎日の朝回診と夕回診が皆さんが主に関わることになる回診です。今回は、そのなかの朝回診についてお話していきます。

朝回診って?

今回お話しする朝回診は、1日の仕事サイクルの軸となる大切な仕事です。朝一番に病棟に集合し、内科であれば指導医と二人で、外科であれば包交車を押しながらグループの先生達と個室や大部屋を順々に巡って行きます。この朝回診、上級医の先生達と一緒に患者さんを毎日診ていくだけでも十分勉強になるのですが、皆さんがしっかり事前準備をしておくとさらに充実した朝回診にすることもできます。今回は、皆さんが研修医として朝回診前にやっておくべき準備の要点についてお話ししましょう。

20分前から始めよう! 朝回診の事前準備

  • check1当直帯のイベントを把握
  • check2担当患者のバイタルを確認
  • check3先回りのひとり回診
  • check4指導医へのお伺い事項を整理

「◯◯君、明日の朝(回診)は8時に集合しよう。よろしく!」と指導医の先生に言われたら、皆さんは次の日は何時に行きますか? さすがに研修医のうちから集合時刻ギリギリに行く強者はそうそういないですよね? 実際、研修医の多くが集合時刻の10〜15分前ぐらいには着いて、指導医が来るまでナースステーションで雑用をしながら待っています。しかし、誰でも働き始めのうちは、せっかく早く着いても何をすれば良いかわからず時間が過ぎてしまいがちです。この回診前のニッチな時間の使い方次第で、日々の朝回診はもっと有意義なものになってきます。ちょっとだけ早起きをして、回診の20分ぐらい前から準備を始めましょう。

 

*この準備時間(20分)は担当患者5、6人を想定した時間です。担当患者数が多い場合や慣れないうちは少し余裕を持って準備を始めましょう。

check1当直帯のイベントを把握

朝回診の事前準備は、朝ナースステーションに着いた時から始まります。最初にナースステーションにいる方に向かって、「おはようございます!」と必ず挨拶をしましょう。挨拶は社会人として当然のことですが、皆さんにとっては「研修医◯◯、ここに居ます。何かあれば遠慮なく声かけてください!」というアピールにもなります。
もし昨夜の当直帯で自分の担当患者さんに何かイベント(状態悪化や急変)があったら、誰かしらが「◯◯先生、昨日の夜◯◯さんが・・・」と話しかけてくれるはずです。むやみに大声は出さず(これ大事)、しかしはっきりと快活な声音になるよう意識して挨拶しましょう。自分の担当患者さんたちに大きな変化がなければ、皆が「おはようございます」と返してくれます。念のため夜勤明けの看護師さんを見つけて「◯◯さん、お疲れ様です。昨日の当直帯に何かイベントありました?」と声をかけておきましょう。「先生の患者さんは昨日は落ち着いてましたよ。でも3時ぐらいに◯◯(部屋番号)の個室に◯◯(病名)の緊急入院が入って大変だったんです。順番からすると先生が主治医になるかも(笑)」なんて思わぬ情報も得られるかもしれません。

check 2担当患者のバイタルを確認

看護師さんへの朝の挨拶を通じて当直帯のイベントを把握できたら、パソコン前に座り電子カルテを開きましょう。ここから5分程度で担当患者さんのバイタルを中心に昨夜から今朝にかけての変化をチェックしていきます。自分の中でトリアージをしておいて、重症の患者さんから順にカルテを開いていきましょう。

 

特に全身状態の悪い患者さんや前日侵襲(検査やオペ)のあった患者さんは、当直帯で状態が変化してもおかしくはありません。最初に掲示板やカルテ記事に何か新しい書き込みがないかを確認してから、夜勤の看護師さんが入力してくれたバイタルや食事量、尿量、S情報(患者さんのコメント)などを経時的変化に注目して見ていきましょう。患者さんは一人ひとり、バイタルのベースライン(普段の値)が違います。それぞれの担当患者さんの基礎疾患とベースラインを意識して、数値変化の裏に何か病態は潜んでいないだろうかと疑いながらデータを追っていきましょう。 バイタルの測定値は日常的に上がったり下がったりしますが、症状を伴ったり複数の項目が連動して動くようなときは病的意義をもつ可能性が高まります。次の先回り回診で、どこに焦点をあてて診るべきか、患者さんごとの観察ポイント(循環?呼吸?熱?)がまとまったら、病室に向かいましょう。

check3先回りのひとり回診

病棟に来てからの5〜10分程度でバイタルの確認までを済ませたら、指導医との朝回診に先回りして自分一人で患者さんの様子を見に行きましょう。集合時刻の数分前にはナースステーションに戻りたいので、一人1分程度(トータルで10分弱)を目安にスピーディーに病室を回ってください。

 

Check1とCheck2を通じて、担当患者さん達の大まかな状態は予想できているはずです。前日からの変化が予想される患者さんに比重を置いて診ていきましょう。この先回り回診では丁寧な診察は不要です。パッと見のインプレッションで全身状態が悪くなっていないかを確認したら、Check2で見当をつけた観察ポイントに絞って診察してください。
安定している患者さんなら「◯◯さん、おはようございます! 昨日の夜から今朝にかけてお変わりないですか?」と挨拶した後、特に問題がなければ「もう少ししたら◯◯先生と一緒にまたお部屋に伺いますので待っててくださいね。」と一声かけて、次の部屋に向かいましょう。

check 4指導医へのお伺い事項を整理

集合時刻の数分前には、先回り回診を終えてナースステーションに戻ってきましょう。あとは回診までの余り時間を使って、指導医の先生に回診中に聞いておきたいことを整理しておけば万全です。Check1からCheck3で集めた情報をもとに担当患者さん達の状況を把握したら、朝回診中に確認すべきこと(病態、治療法、検査オーダー、事務処理、今後の予定)をメモにリストアップして朝回診が始まるのを待ちましょう。もし指導医の先生が早く病棟に来たら、朝回診を回りながら、頭の中でお伺い事項を整理していきましょう。

指導医の教える気スイッチをONにしよう!

指導医にとって、回診は単に患者さんの状態を把握するだけでなく、研修医などの若手に教育を行う場でもあります。しかし、皆さんがただ指導医の後ろをついて回っているだけでは、いつになっても指導医の教える気スイッチはONにはなりません。指導医が教育モードに入るかどうかは、フレッシュマンである皆さんの「活きの良さ」にかかっています(もう本当これに尽きます)。

 

回診の主役は、皆さん研修医です。初日から遠慮せず、ちょっと前のめりになるぐらいの気持ちで積極的にいきましょう。担当患者さんの部屋が近づいたら、指導医より一歩前に出て、「◯◯さーん、おはようございまーす!」と回診の切り込み隊長になってください。積極的に患者さんへの第一声をとりにいく姿に、「おおっ、今度の研修医はやる気あるな!」と指導医のスイッチが入ること間違い無しです。回診前に先んじて得た情報を活かせば、「患者さんをよく診てるなぁ」と感心され、より深く専門的な話も聞かせてくれることでしょう。朝回診という成長の機会を活用して、1日1日着実に自分の臨床力を磨いていきましょう。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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