学校で教えてくれないデキる研修医のつくり方

3. はじめての他科コンサルテーション

皆さんは、コンサルテーションという言葉に聞き覚えはあるでしょうか? 臨床実習が始まったばかりの頃だと、聞いたことがなかった人も結構いるかもしれません。今回は医学部の講義ではほとんど出てこないけれどもスキルの向上にも繋がる重要な他科コンサルテーション(他科診察依頼)の正しい書き方を身に付けましょう。

他科コンサルテーションって?

医学部の講義ではほとんど出てきませんが、コンサルテーション(consultation)とは、その道の専門家への相談を指す言葉です。他科コンサルテーションとは、院内の他の科の先生にお願いして、自分の担当患者さんを診てもらうことです。臨床の場ではコンサルテーションは「ご高診」や「他科診察依頼」と言う院内紹介状を書くことも意味し、研修医の症例提示スキルの向上にも繋がる大切な仕事です。

例文でマスター! 他科コンサルテーションの書き方

  • step1診断
  • step2はじめの挨拶
  • step3現状の要約
  • step4コンサルの目的
  • step5結びの挨拶

それでは、実際のコンサル文(他科診察依頼)の書き方を5つのパートに分けて説明します。パソコンの前で書き方に悩んで貴重な時間をロスしないよう、効率的なコンサル文の書き方をマスターしておきましょう。それぞれのパートで例文をつけて説明しますので、指導医に「◯◯君、ご高診出しといて!」と言われたらサラサラっと書き終えて遠慮なくドヤ顔しちゃってください(笑)。皆さんの書いたコンサル文を読む忙しい外来担当医のためにも、「どんな患者さんの何を相談したいのか」を明確にしてコンサル文を書きましょう!

step1診断

記載例

  • #1メイン疾患(入院契機となった病名)
  • #2コンサル科疾患(コンサルする診療科の病名or症状)
  • #3合併症A
  • #4合併症B

 

コンサル文の最上段に記載すべきは、診断名です(電子カルテによっては診断名の入力スペースがあります)。第2回で紹介した「はじめてのカルテ作成」のときと同じように、#No.で疾患名をリストアップしていきましょう。#1には、自分の科に入院する理由となった疾患の病名を、#2にはコンサルしたい疾患名(疑い可)もしくは症状を、#3以降は重要度の高い合併症を2つ3つに絞って記載しましょう。

step 2はじめの挨拶

例文1(相手が面識のない先生の場合)
「平素より大変お世話になっております。」

例文2(相手が親しい先生の場合)
「いつもお世話になっております。」

 

ここからが本文になります。この書き出しの部分は、手紙で言えば時候の挨拶になりますが、間違っても「拝啓、時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます」なんて書かないでくださいね。ビジネス文書ならそれで正解だし、外の病院に出す紹介状ならセーフかもしれませんが、院内コンサル文でかしこまり過ぎた時候の挨拶を書いてしまうのは見当違いです。本文の書き出しに求められるのは、相手の先生に最低限の礼儀を示した上で、単刀直入に用件に入るためのはじめの挨拶です。シンプルな1行程度の決まり文句を用意しておくといいでしょう。この部分にオリジナリティなど工夫はいらないので安心してください。実際私なんか研修医の時からずっと例文1か2しか使ってません(笑)。

step3現状の要約

例文1(その科を初めて受診する場合)
「#1に対する◯◯目的に2/13当科入院となったPt.です。この度、#2に対する精査目的に貴科ご高診の運びとなりました。」

例文2(その科の受診歴がある場合)
「#2にて以前より貴科外来フォロー中のPtです。この度、#1増悪のため2/13当科緊急入院となりました。」

 

はじめの挨拶をサクッと1行で終わらせたら、次は2行ぐらいで患者さんの現状を要約して伝えましょう。長ったるい症例提示はNGです。たまに良かれと思って発症の経緯から丁寧に書いてくれる研修医がいますが、長い文章は忙しい外来医をイライラさせてしまいます。病歴の詳細を知りたい時はちゃんとカルテを読んでくれますから安心してサマライズしてください。 ここで伝えるべき情報は、「なぜ入院したのか」と「どうしてコンサルしたのか」の2つです。コンサルを受けた先生が、パッと見て状況を把握できるよう、「一言で言うとどんな症例か?」をコンパクトにまとめましょう。

step 4コンサルの目的

例文1(他科疾患の精査をお願いする場合)
「入院後、2/16より◯◯(症状や所見)を認め、まずは◯◯(内服や注射)にて対応しました。しかし症状は改善せず、徐々に増悪しております。当科的には□□□は否定的と考えており、△△△など貴科的疾患の可能性も考慮しております。つきましては貴科的ご高診いただければ幸いです。」

例文2(術前評価をお願いする場合)
「#1に対して、2/20に◯◯(手術や侵襲的治療)を予定しております。つきましては、貴科にて術前の心機能評価をお願いできればと思います。」

例文3(他科治療薬の指示を仰ぎたい場合)
「今回、当科では2/16より◯◯治療を予定しております。つきましては、貴科治療薬の調整が必要であればご指示いただければ幸いです。」

 

現状要約の後はいよいよ本題です。今回のコンサルテーションの目的をはっきりと伝えましょう。こちらが何に困っていて、相手に何をして欲しいのかが明確になっているかどうかがポイントです。いくら研修医でも「よくわからないので、とりあえず診てください」的な丸投げコンサルをしては、「一体、こちらに何をして欲しいんだい?」とお怒りの電話がかかってくる可能性大です。相手にお願いしたいのは診断か? 検査か? 治療か? 必要であればコンサルを出す前に指導医にもう一度コンサル目的を確認しておきましょう。

step 5結びの挨拶

例文1(基本パターン)
「お忙しいところ大変恐縮ですが、ご高診のほど何卒よろしくお願い致します。」

例文2(相手の科との連携が予想される場合)
「治療スケジュール詳細につきましては、2/13の入院時サマリーをご覧ください。何かありましたら、担当医(研修医 ◯◯ PHS777, 指導医 ◯◯ PHS888)まで遠慮なくご連絡ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。」

 

コンサル文の最後のパートは、結びの挨拶です。忙しいながらも対応してくれる他科の先生への感謝や気遣いを示してコンサル文を締めくくりましょう。と言っても、はじめの挨拶と同じで1行テンプレで済ませて大丈夫です。まずは基本パターンを参考にして、兼科など治療の連携が予想される場合には補足情報を書いておきましょう。担当医の連絡先などを記載しておくのも好印象です。

コンサルを通じて臨床のエッセンスを吸収しよう!

コンサルテーションを通じた他科の先生とのコミュニケーションは、皆さんが効率的に臨床のノウハウを学ぶ大きなチャンスです。いくらスーパーローテと言えど実際には回らない科も沢山あります。何を聞いても許される研修医という立場をフル活用して、できるだけ多くの科の先生から積極的に臨床のエッセンスを吸収してください。

特に皆さんが研修を積むような大学病院や総合病院の外来担当医は、その道の猛者揃いのはずです。後日、廊下で見かけたりしたらすかさず御礼の挨拶をしときましょう。「◯◯先生、先日のコンサルでは◯◯病の◯◯さんを診てくださってありがとうございました! ああいうケースには◯◯も鑑別に考えなきゃいけないって凄く勉強になりました!」と、先生スゴイです!という気持ちで話しかけましょう。若い研修医に目をキラキラさせて話しかけられたら、1つや2つ臨床のノウハウを教えてあげたくなっちゃうものです。そういう実践的な臨床のTipsは、教科書に書いていないし専門医として症例を経験しないと一生かかっても得られずじまいです。
日々の研修医業務をこなしていく中で、わざわざ他科診察依頼を書くほどじゃないけど「これって◯◯科的に考えるとどうなんだろ?」的な小さな疑問が山ほど出てきます。食堂で知り合いの先生を見かけたら挨拶がてら何か質問してみるのも良し、悩んだ時に前の科のオーベンにコールして相談するのも良し、他科のプロフェッショナルとのコミュニケーションを通じて臨床経験値を上げていきましょう。

PROFILE

  • 竹田 陽介 Takeda Yosuke

    心臓病、生活習慣病の診療を専門とする内科医師。チーム医療におけるコミュニケーション技術や患者満足度調査において高く評価されている。独自の医療コミュニケーション理論に基づく病状説明は、わかりやすく安心できると幅広い年代から信頼され、家族を連れて来院する患者も多い。

    現在、循環器内科医師としての診療に加え、Vitaly代表としての講演・研修や企業に対する健康経営コンサルティングも行っている。


     株式会社Vitaly

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