新型コロナで実感した、「垣根を越えた協力体制」の必要性「健康・医療・介護の未来づくり」をテーマに20日からオンラインで開催
日本公衆衛生学会

第79回 日本公衆衛生学会総会2020 会期:10月20日(火)~22日(木)

日本公衆衛生学会の総会が、10月20~22日の3日間の日程で開かれます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、1951年の発足以来、初めてのオンライン開催となります。新型コロナの感染拡大で、「公衆衛生」にはかつてないほどの注目が集まり、その重要性が改めて認識されています。総会の開催を前に、学会長を務める今中雄一先生(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 医療経済学分野 教授)に話を聞きました。

コロナ禍に総会を開催する意義を教えてください。

新型コロナは、医学領域にとどまらず、社会学領域全般に関わる複雑な問題です。医療、介護、保健、産業、市民、それぞれが垣根を越えて、協力体制を作っていく必要性を私も強く実感しました。総会の主題に据えているのは「健康・医療・介護の未来づくり」と「社会的協働」です。新型コロナの問題化の前に発表していたのですが、今ますますこの主題が重要になっていることは間違いありません。

また、公衆衛生の分野は、何をしているのかが見えにくい領域と指摘されてきました。しかし、新型コロナの影響でさまざまな立場の人が注目されるようになり、かなりお互いのことが見えるようになってきています。このような状況の中で、関係機関がお互いの事情を総会で共有することで、今後の連携がさらに取りやすくなるのではないかと考えています。

新型コロナの影響で総会の内容に何か変化はありましたか。

新型コロナの感染拡大を受け、メインシンポジウムを二つ新設しました。「COVID-19 感染の実像を考える」と題し、最前線で活躍する、東北大学の押谷仁教授、京都大学の西浦博教授、国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターの黒田誠センター長、国立国際医療研究センター国際感染症センターの大曲貴夫センター長に、最新の情勢について議論していただきます。また、地区医師会、看護協会、研究教育機関、NPO法人から講演者を招き、「新型コロナウイルス感染症対策と地域社会における連携」をテーマにお話ししていただきます。

さらに、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長には、地域社会で起こっている「実際の話」について講演していただくほか、保健所、検疫所、地方衛生研究所などの現場それぞれの視点から、新型コロナに迫ってもらいます。現場レベルに社会的協働をどのように取り入れ、その上で今後をどのように展望するのかという点に注目して講演を聴いてもらいたいと思います。

もう一つのメインシンポジウム「健康とスマートシティ・まちづくり」はどのような内容なのでしょうか。

スマートシティ化が進む福島県会津若松市やコンパクトシティ戦略を掲げる富山県富山市の取り組み、持続可能な発展を目指し神奈川県藤沢市で行われている事業「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」、先進的な取り組みをしている京都地域包括ケア推進機構などからの説明・発表を受け議論します。東京大学高齢社会総合研究機構の辻哲夫特任教授の取り組まれる千葉県の柏プロジェクト、山下晃正副知事の京都府のスマートシティの特別講演と連動して行います。

国は、仮想空間と現実空間の融合で実現する未来社会のコンセプト「Society(ソサエティ)5.0」を推し進めていますが、目標が少し不明瞭に思えます。産業活性化ももちろん必要ですが、健康で、生き生きとした街や暮らしをつくることに重点を明確に置くべきです。ただ、健康寿命を延ばそうとした場合、医療・保健・介護システムの拡充だけでは十分ではありません。そこで、ロボット工学やICT、ソサエティ5.0などを利用して、社会経済環境や日ごろの暮らしのあり方を向上していくことが求められています。今回の総会では、それを担うスマートシティづくりの試みを取り上げ、将来の社会システムづくりを考える機会にしたいと思っています。

メインシンポジウム以外は、どのようなテーマが取り上げられるのでしょうか。

公衆衛生分野はこの10年、大規模なデータを使って医療や介護を研究し、社会設計に取り組む領域が強化されてきているように思います。その方向性の中で今回は、地域包括ケア、認知症対策、地域医療計画、メンタルヘルス領域、ナッジ理論(行動経済学)、健康経営、災害医療など、トレンドを押さえたテーマが充実しています。

特別講演では、医療研究における我が国のFunding Agencyである日本医療研究開発機構(AMED)の三島良直理事長にも登壇していただきます。教育講演では、京都大学こころの未来研究センターの広井良典教授が科学哲学者の立場から、メインの研究テーマである「持続可能な福祉社会――コロナ後の社会構想と人口減少社会のデザイン」を取り上げます。また、COVID-19、気候変動、データヘルス、健康の社会的要因、オーラルヘルスから、国際キャリア形成の手ほどきまで、合わせて14の教育講演があります。

初めてのオンラインによる開催をどのように捉えていますか。また、医師を目指す学生にメッセージをお願いします。

オンラインならではの利点があると考えています。今までは、同時刻に行われている講演は一つしか聞くことができませんでした。今回は11月末までアーカイブ配信をするので、時間に縛られず、じっくりと腰を据えて、全ての講演を視聴することができます。会場に足を運ぶ必要がないという点で、参加しやすくなったのではないでしょうか。

また学部生の皆さん限定で、アーカイブの無料公開も行います。所属大学の当学会会員の先生からの招待で視聴可能になりますので、「健康と社会」や「医療と社会」という言葉に少しでも興味がある学生は、自分の大学の先生に相談をして、ぜひ一歩踏み出して視聴してください。個人的にも今回は特に、どの講演も聴いてみたいと思うような充実した内容になっていると感じています。

今中 雄一(いまなか・ゆういち)

1961年大阪府生まれ。86年東京大学卒。東京大学、米ミシガン大学で複数の博士号取得。河北総合病院、日本医科大学助手・講師、九州大学助教授、亀田総合病院などを経て、2000年より現職。Founding Member - International Academy of Quality and Safety in Health Care (アジアからは初選出)、日本公衆衛生学会理事・学会長、医療経済学会理事(前理事長)、日本医療・病院管理学会理事、社会医学系専門医協会理事長などを務める。

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